5月の憂鬱 : 美山 ― 2014年05月01日
正月に青竹で:洛西 ― 2014年01月30日
台風18号と大クワノキ:西山 ― 2013年10月09日
9月17日、京都では珍しく、避難を呼びかける電話が鳴り続けた緊張の一夜が明けると、沓掛のみつばち保育園西山園舎から、園長の悲壮な声で一報。
あちこちの土砂崩れや河川の決壊箇所の情報も入らぬ混乱の中、迂回を繰り返して法人の理事長を乗せ、現場に辿り着くと、みつばち保育園の大看板クワの木が二股の根元からパックリと割れて倒れている。(「この素敵な足のために」参照)
たいせつな運動会を5日後に控え、いつものことだけど、対応は緊急を要した。
≪ これまでの30年、これからの30年 ≫
捨身のリーダーが中心となって築いてきた30年。法人化のあと、これから若い世代にどうバトンを渡してゆくのか、次の30年をどう描いてゆくのか… それは、つまるところ若い人たちが自分たちで考え、作りだしてゆくしかない。
この西山園舎は近年、努力を重ね敷地を広げたが、途中で放置されそのまま荒れた部分もあったり、手軽で便利なキャンプ場のような使われ方をされたりで、子どもたちの大切な場所にしてはまるで遺産を食いつぶしているような妙な状況になってきている。世代の節目の時期にさしかかって、保育園では議論を起こそうとしていた。
保育園の人気の樹木は、連日の踏圧で固められ根呼吸もしんどく、非常に過酷な状況を覚悟しなければならない。山や庭とも全く条件が違うし、寿命にも影響が大きい。
苗木を植え30年。この木は子どもたちに愛され、12mの高さにまで育った。登りやすいように剪定や施肥を繰り返してはいるのだが、一方で太い枯れ枝も目立ち始め、ちょっとくたびれた体に鞭打ちながらも、子どもたちを両手に抱えたり、木陰で守ったりと、一緒に遊びながら嬉しそうに立っていた。
起こして、残った根の量にふさわしく、ぐっと小ぶりに整姿剪定し、たくさんの頑丈な支柱で支え、土壌改良して、養生のため柵で囲い立ち入り禁止にする… 樹木治療としては基本だが、いつも子どもたちに囲まれて共に育ってきたこの木がそういった対応を望んでいるだろうか? あるいは、そんな形になってまで遺産にしがみつくのは、常に前を向いてきた「みつばち」らしくないと……
これまでの30年をシンボライズする木が倒れたのは、次の30年を具体的に考えてもらういい機会ではないか。残念だが思いを切って、伐るべし。
根も全て掘り取り、更地にして、次の30年に向かって新たな風景を若い人たちに、今度こそ本気で描いてもらおう。
ここで本園の運動会があるので3日以内に作業を。
園長、理事長、私の話し合いは、こういう結論になった。
しかし結局、私には伐ることはできなかった。
園長、理事長の覚悟ともいえる決断を裏切ってしまったが
倒れても、傷ついても、かっこ悪くても、人間の子どもたちと生きてゆく…
それが大クワの意志ではないかと思えてきた。
パックリと裂けて倒れた太幹はかえって動かさない方が、かろうじてつながっている根を傷めない。芝生山に向かって倒れているので、それなりに安定しているから、最低限の剪定と傷ついた根元を改良土で保護すれば、このままなんとか生きてゆけるかもしれない。
あこがれのクワの木が横になってくれて、これまで登れなかった年中以下の子どもたちでも登れるかたちに。複雑な枝ぶりは、自然のジャングルジムであり、立体あみだくじである。心配そうな子どもたちに、だいじょうぶ登っていいよと声をかけると、たちまち鈴なりになった。
もう一方の、小ぶりな方は引き起こし、6mの檜丸太で三方からしっかりとスマートに支えた。小ぶりといっても10mほどある。いくつもひび割れた地面は改良したが、あえて立入防止柵は設けず、すぐに年長に登ってもらった。以前よりも数段難しくなったが、慎重に考えながら時間をかけててっぺんまで登ってくれた。すばらしい!
子どもたちは、いろんな遊びを工夫し始めた。倒れた幹でなんとカマキリのレースもやったのだそうだ。
大クワは最後まで子どもたちとふれあう道を選んだ。
園長、理事長にもご納得をいただいた。園長はレイアウトが大幅に変わってしまった運動会の場で、保護者たちにも趣旨を丁寧に説明してくださった。
それにしても、こんな保育園って、きっとどこにもないだろうな…
折りしも、中秋の名月。台風18号でずいぶんひどいことになっていた京のまちだが、西山からの眺めは美しかった。
…… そしてこれが その8年後の姿。
勝手な「園の都合」で一杯だった私たちに
このままで共に生きようと
心に直接働きかけるほどの
強烈な意思を示した大クワは
私たちの想像を遥かに超えて
子どもたちに素晴らしい応えを見せてくれています。
スローガンではない
ほんとうの「生きる力」を。
庭のプロって何? : 長岡京 ― 2012年07月14日
※ 庭の修理です。この頃特によく感じることがあり、あえてメモに残すことにします。
Before 後ろ側
Before 後ろ側
丘陵地に造成された住宅街。敷地いっぱいの大きな建物が並ぶ。
お茶人口が減り続ける日本で、狭い場所で工夫しつつ、熱心に稽古をされているお宅の「茶庭」の右半分。
塀に穴を開けて大きなガスメーターが正面に鎮座している。
右のコンクリート擁壁には、高さ0.6mの板石が21枚、モルタルで張り付けられ、さらにその上に高さ1.8mの「建仁寺垣」が乗っていたのだが(下のBefore手前側写真)、か細い六つ割の桟もろとも春の風で吹っ飛んでしまったそうだ。
「工務店下請けを避けて、わざわざ近くの結構大きな造園業者にお願いしたのですが…」
「前の業者にはもう頼みたくない。いったいどこに修理を頼んだらいいのか…」
かつて、通っておられた書道の師範宅で見た私の仕事を、思い出すまで時間がかかった
とおっしゃっていた。
↓ キレイに吹っ飛んだ建仁寺垣の跡。板石の腰張りが残る。
腰張の板石の内側には、75㎜の擁壁水抜き穴が3箇所隠されていた。腰張りされた板石をめくってコンクリの詰め物を取ると、止められていた水が勢いよく噴き出してびっくり!
しばらく止まらなかった
↓
浄土寺石の配置と浮かしたヒノキ60×30で、
水の流れる道を考えながら頑丈な骨組を組む。
↓
割竹、抑えを張り、お隣り側にはヒノキ板を張る。
竹は防カビ剤2度塗り、裏板塀には木材保護塗料。
↓
After 後ろ側
竹は防カビ剤2度塗り、裏板塀には木材保護塗料。
↓
After 後ろ側
ガスメーターは、木材保護剤を塗布した京都産ヒノキで下地を組上げ、無節の京北産杉皮を張って隠しをあつらえた。メンテナンスがあるため、可動式。
建仁寺垣の意匠には、着物で至近を通る(道幅60㎝)ので、引っ掛けないよう縄も少なめに。裏側の隣から見えるところはヒノキ板塀。防カビ対策済。
使う庭である「茶庭」には、とりわけシンプルで品のよさが必要だと思う。
外回りの下地に、湿気に弱いコンパネや杉の白身(しらた)などは普通は使わないものだ。
この程度のあたりまえのことが、此の頃あたりまえでなくなっている。
Before 手前側
7年前のこの庭のようす。まだ比較的新しい。
斜めに設置された狭い枝折戸を左に開けると、蹲踞が完全に隠れて使えない。
細い杉の加工杭に出来合いの竹組が張り付けてあったり、笠しか見えない超ミニチュアの雪見灯篭が不安定に置かれてあったり、ホームセンターで売られているような材料ばかりだし、植栽も真砂土だけで土壌改良剤すら使っておらず、極端な深植えで侘助椿は衰弱していたし、前出の使えない蹲踞など、レイアウトも稚拙だったので、ご主人が奥さまのご趣味の為に、日曜大工でガンバって作ったんだろうと、この時は本当に思ってた。
これがすべて、その地元では一定 名の知られたプロの仕事だったとは。
奥の建仁寺垣が風でコケて、初めて真実を知る。
↓
After 手前側
After 手前側
檜丸太で枝折戸の取り回しを変え、横を向かなくても通れるように。常に蹲踞も使えるように。
小さな出費で済むよう、最小限の修理にとどめたが、庭の空気は地に足をつけたように変わった。
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※ 造園屋に仕事を頼む時は・・・
少なくともその庭職の作った庭を見ておきましょう。
案外それぞれに得手不得手があります。
できればその家の住人に、感想や人となり、メンテの様子などを聞きましょう。
相性がよければ、その職人とは一生の付き合いになるのですから。
庭木の剪定といえども、いわば造園の一環ですから、光や風、土壌や水はけなど現場の個性や樹木の状況を見極め、
その上で、ご家族の思想(おもい)を受け止める知識や技量、度量が問われます。
(どこへ行っても同じような意匠の庭をつくる人も現実にいます。)
生き物としての庭は「だんだん良くなる」のが当たり前で、「いつも同じ」はおかしいのです。
職人というのは、つねに向上心を持って腕と信用で生きているのが普通(と思いたい)。
住む人にとって庭は、心に寄り添うとてもプライベートな空間です。
少しでも信用できないときは、頼むのをやめましょう。
おそらく職人に対しても失礼ですから。
庭はくらしとともに変化し、時間をかけて楽しむもの。そして幸せを感じるもの。
家と違って、竣工時が完成ではありません。
そういった「仕事の質」を買うわけですから、
その場限りの安物買いは、むしろ高くつくことが多いのです。
自称プロに台無しにされた庭をいくつも目にしてきました。レベルの低下を時代のせいにしたくはありませんが、信用の内実が希薄になっているのなら、無責任な仕事には損害賠償を請求されるような緊張感も必要なのかもしれません。
出会いは生き方によるのだろうと思います。
仕事を見て判断していただくため、私も電話帳掲出や広告などはしておりません。
お客様を尊敬し誇りに思える出会いに感謝しています。
少なくともその庭職の作った庭を見ておきましょう。
案外それぞれに得手不得手があります。
できればその家の住人に、感想や人となり、メンテの様子などを聞きましょう。
相性がよければ、その職人とは一生の付き合いになるのですから。
庭木の剪定といえども、いわば造園の一環ですから、光や風、土壌や水はけなど現場の個性や樹木の状況を見極め、
その上で、ご家族の思想(おもい)を受け止める知識や技量、度量が問われます。
(どこへ行っても同じような意匠の庭をつくる人も現実にいます。)
生き物としての庭は「だんだん良くなる」のが当たり前で、「いつも同じ」はおかしいのです。
職人というのは、つねに向上心を持って腕と信用で生きているのが普通(と思いたい)。
住む人にとって庭は、心に寄り添うとてもプライベートな空間です。
少しでも信用できないときは、頼むのをやめましょう。
おそらく職人に対しても失礼ですから。
庭はくらしとともに変化し、時間をかけて楽しむもの。そして幸せを感じるもの。
家と違って、竣工時が完成ではありません。
そういった「仕事の質」を買うわけですから、
その場限りの安物買いは、むしろ高くつくことが多いのです。
自称プロに台無しにされた庭をいくつも目にしてきました。レベルの低下を時代のせいにしたくはありませんが、信用の内実が希薄になっているのなら、無責任な仕事には損害賠償を請求されるような緊張感も必要なのかもしれません。
出会いは生き方によるのだろうと思います。
仕事を見て判断していただくため、私も電話帳掲出や広告などはしておりません。
お客様を尊敬し誇りに思える出会いに感謝しています。
建仁寺垣とニュードーン : 伏見 ― 2012年06月22日
たとえば代が変わったり、駐車場が必要になったり、バリアフリー化などと、その場所で根を張って暮らしていくために必要な改変。
住むひとに寄り添い、地域に落ち着きとうるおいをもたらす。庭の改修とは、きっとそうゆうこと。
Before
アンバランスな印象。巨大な中国製春日燈籠の迫力(圧迫力)が、ひたすら視線の前に立ちはだかって、なんだか落ち着きません。
↓
After
御香宮を氏神にまつるご町内。ご家族のライフスタイルやそのおはなしを聞くにつけ、2mを軽々と超える大きな中国製春日燈籠の扱いがネックになっていました。
日本の春日型燈籠をデフォルメしたようなデザイン。農協も売りさばいたため日本の田舎では根強い人気があります。大型で手軽に威張りたい向きにはたいへん便利な素材ですが、残念ながらステイタスにはなりません。
大型になるほど、暮らしや庭との調和、品の良さといった感覚からは遠ざかって家庭では難しい素材だと感じています。シンボリックな扱いなら使えそうですが、この燈籠は地震にも弱いため、使うには注意と工夫が必要かと思います。
このお宅の場合は、庭でお孫さんたちが遊ぶこともあって結局撤去することになりました。
そのあと、お宅にあった古い素材 ― 雪見や景石、水鉢、臼石、植栽、鉢植えなど― を見つけ出しては、ずらしたり、深く沈めたり、時にはひっくり返したりしながら使いました。
石畳は、軒内からつながっており、将来の駐車場化にも備えて十分な広さを確保。洗濯物も思い切り広げられるし、小さい子どもたちが来ればプールやBBQだってできます。
この庭は、奥さまの好みに添ってこれから大きく変わり始めます。
右手前には竹組でバラのスクリーン(袖垣)を作りピンクの春がすみや紫の小花ファイルフェンブラウなどを植栽、今後はさらにお好みのバラを配置し育てていきます。和風にバラ。四季を通して、大胆に個性的に変化していく様子が、とてもたのしみです。
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一年後のようす。 枯池にはヘンリーフォンダ。
建仁寺垣には、この1年で4mも伸びたニュードーンが誇らしげに咲いていました。
みつばち菜の花保育園 梅雨入り ― 2012年06月21日
開園2か月半。もうノウゼンカズラが咲き始めた。大きくなりながら初秋まで咲き続けてほしい。
アーチは、京都産アテ錆(アスナロ)出節丸太と松の流木で制作。オスモウッドステインプロテクター#726使用。
こみかんの花。遠くにいてもわかる、強く懐かしい香り。
ノウゼンカズラ。すぐに咲くように古い大きな株を植えた。
ジューンベリー、ブルーベリー、こみかんに続きキンカンの花が咲いている。ヤマボウシやクチナシも。6月の自然界は圧倒的に白い花が多い。
そのなかでの、この発色。気持ちいい!
ジューンベリー、ブルーベリー、こみかんに続きキンカンの花が咲いている。ヤマボウシやクチナシも。6月の自然界は圧倒的に白い花が多い。
そのなかでの、この発色。気持ちいい!
雨の朝。年長のいる北側窓。
この日陰の庭ではクリスマスローズは既に終わり、ギボウシ、ヤマアジサイが存在感を増す。
「うっとしおすなぁ」が挨拶だけど、なんとなく、私はこの季節が好きだ。
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