朝日のあたる松:天竜二股 ― 2018年12月30日
高い枝に 下方から朝日が当たり始める
やがて光が満ち 木々は覚醒する
天竜の広大な扇状地にも光は届き始める
こんな場所で育つと 人はどんな感性を獲得するのだろう
台風21号でたくさんの松が折れてしまった
静岡県立森林公園
残った松たちが 思い切り 朝日を浴びている
この近くの城山で生まれ育ち 京都の美山町で亡くなった
ふく(不矩)さんという絵描きに会いたくてやって来ました
神主だったという城山の生家は 見つけられませんでした
その生家のすぐ近く 天竜市(現浜松市天竜区)二股町にある
浜松市秋野不矩美術館 です
設計は藤森照信氏
はだしで彼女の作品にじっと向き合うことができます
座り込んでも大丈夫
本や絵本も出ていますし
いくつかの作品の写真を見ることができますが
作者の思想や生き様
そのエネルギーにふれることができるのは
本物の筆致に対峙したときだけ と
強く思い知らされるほど
想像をはるかに超えた彼女のスケールと深い愛情
そして表現への執念の努力に圧倒されました
交流のあった大飯町の水上勉さんは 感電したような衝撃と書き残しています
描かれた土 石 水 風 空 生きもの 祈り
それら全てのいのちのありようが 心地良く沁みてきます
すべてを受けとめる自然な日常の いとおしさ
彼女が生涯をかけて追求し はっきりと見せてくれた
日本画の可能性の大きさに 正直驚きました
思想性をここまで説得力を持って表現できるんだ
そう思ったら
何故か ふと暗殺されたジョン·レノンの笑顔が浮かんで来ました
(砂漠のガイド 2001京都春季創画展)
アフリカのサハラ砂漠から帰った彼女が 92歳でこの絵を描いていた頃
私は ただのご近所抱えの職人として その数件先で作庭していました
この年の秋
6人の子どもたちも産み育てた
美山のちっちゃいおばあちゃんは
お寺の隣の 小さな画室から
空のとても高い所へと旅立って行かれました
当時 美山町役場横の図書室入口には 彼女が寄贈した大作が高い所に掲げられていましたが 広いガラス越しの日光に晒され続け ひび割れて随分と傷んでいたのを思い出します
(秋野不矩美術館の受付横に掲げられています)
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※ 彼女の作品を今回 関西でも観ることができます
2019年2月9日〜3月24日 ☎ 0739-24-3770
会期中一部展示替えがあるようです
前期 2月9日(土)~3月3日(日)
後期 3月5日(火)~3月24日(日)
前期後期を通しての展示には 朝露、砂上、紅裳 などの20代の作品から 青年立像、雨期、カミの泉Ⅱ、朝の祈り 80代に発表した 雨雲、渡河 など幅4m程の大作も含まれています
晩年に向かうほど質量ともにスケールを増してゆく ふくさんのすごさを感じます
田辺市立美術館は 広い敷地に寄せ棟風の平屋建てで気取った冷たさもなく 作品の多くはガラスも柵もない 観る人に配慮した展示です (はだしには なりにくいですが)
きっと 大きなヒントを与えてくれると思います
アフガニスタン風景 (1972 第36回新制作展 64歳)
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