イヌワシの山:北尾根 ― 2020年05月15日
この伊吹山から連なる北尾根を歩きました。
平穏に見える北尾根の美しい新緑ですが、場所によっては、とんでもない強風が間断なく吹き続け、何かに掴まって思い切り腰を低くしないと滑落しそうな、おっかなビックリの山行きでした。ナウシカの尾根か。
出会った人間といえば、スナフキンのようなご老人お一人様のみでした。岩だらけの急な下りを強風の中先行されてて、足元が大丈夫かなと心配していると、2本のピッケルを蟻の触角のように小刻みに使い、あれっ見えなくなった!と思ったら、私が探していた植物の傍にいつのまにか先着していて、静かに観察しておられました。すごい…
鹿から隠れるようにして、藪の中で生き残っていた一本の片栗(カタクリ)。
可愛い花だけに、名前の由来がどうもよくわからない、馬の足形(ウマノアシガタ)。
大犬の陰嚢(オオイヌノフグリ)に負けず劣らずの命名か。
手前の低い花は、細葉の甘菜(ホソバノアマナ)、後ろは伊吹旗竿(イブキハタザオ)。
山芍薬(ヤマシャクヤク)の群生。
この花に会いたくて来ました。開花2日目には開き切ってしまいますので、慎重に日取りを見定めたつもりでした。今日しかない!と ハバかりつつ越境して参りましたが、木陰が濃いほど蕾も固く、3、4日早かったかな。
咲いていた!
木が倒れ日当たりは良過ぎるが、その幹に寄り添うようにして強風に懸命に耐えている。
盗掘や林道工事、森林伐採や杉の植林放任などで、極端に少なくなってしまいました。古来より熱さましの生薬、アイヌの薬草としても伝承されてきたボタン科の固有種。( Paeonia japonica )
その神秘的、宇宙的で気品に満ちた大輪は、見る人を謙虚でやさしい気持ちにします。
京都の山で見る花よりも、幾分黄色がかっているようです。
かつて、この花を山で初めて見た時の感動を、子ども達や保育士たちにも伝えたくて、20年かかって庭で根塊化した大株を、京都のみつばち保育園北園舎の庭を作った折に、カマツカやソヨゴ、シャクナゲなどと共に植栽しました。
しかし自分の思い入ればかりが強すぎたのか、もひとつ反応が得られず、そのうちに市街地の空気に馴染めず数年かかって絶えてしまったという、失敗の苦い思い出があります。花は与えられるものではなく、自ら求めてこそ響く ということか。
二輪草(ニリンソウ)と呼びますが、二輪同時には咲きません。
走野老(ハシリドコロ)はこの時期、普通に山に群生しています。⚪︎⚪︎ドコロ(野老)というのは芋や根塊のこと。薬にも使われますが、全草有毒につき要注意。触れた指で目をこすると瞳孔が開き、世界がとてもマブしくなるそうです。
富貴草(フッキソウ)の花は、明日にでも咲きそう。
伊吹周辺にはイヌワシ(Golden Eagle)のカップルが1組だけ住んでいます。
以前は2組いたそうですから、最後のカップルになるのかもしれません。
伊吹の豊かな自然の象徴であり、ヌシのような存在。
ふと空を見上げると、その二羽のイヌワシが、強風の中を翼を広げ、風上に向かってゆっくりと飛行している。
そのうちに一羽が、猛然と鉛直線を引く様に急降下し、山影に消えて見えなくなった。
ぽかんと呆気にとられて、見とれてしまった。
我にかえって、写真をと思った時には、2メートルの翼を広げたイヌワシがゴマのような点になっていました。
写真上空の真ん中にその一羽が、遠いシルエットになって写ってはいますが… 。
⚪︎ ⚪︎ ⚪︎
( 何人もの男達が、立派な機材で一年中「伊吹山のイヌワシ」を追って根気よく撮影を続けておられます。興味ある向きは検索してみてください。子熊を狙ったり、子鹿やウサギを掴んで飛ぶ姿も撮影されています。)
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