楡の木蔭にて:茨木市 水尾保育園2017年05月10日




楡と桜、木陰のぜいたく


        芝生

     そして私はいつか
     どこかから来て
     不意にこの芝生に上に立っていた
     なすべきことはすべて
     私の細胞が記憶していた
     だから私は人間の形をし
       幸せについて語りさえしたのだ

    (谷川俊太郎 『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』 より)





グラウンドの暗渠排水工事中
    

  水尾保育園 (社会福祉法人穂積福祉会/大阪府茨木市水尾1丁目) ⇒Linkブログ
の新園舎に合わせて、園庭をつくりました。
園舎は明快でシンプル。大きくて、ちょっとのんびりとした雰囲気も漂います。



水尾保育園 暗渠排水工事中

   (グラウンドの暗渠排水工事のようす)


 
 大阪府茨木市の現場まで、京都の山奥から片道2時間。
向こうもわかっててわざわざ指名するなんて、一体どんなところなんだろうって…。
ガンバって行ってみたら、たくさんの素晴らしい出会いが待っていました。


  優しくて、真面目だけど視野も広くて(山がないから?)思ったよりざっくばらんな水尾の空気。預かる子ども達はもちろんだけど、上手に人を育てようとしているんだな、という印象を受けました。


時には引っ込み、職員から自由な意見を引き出そうとしてくれた松方タミ園長をはじめ、
いきなり、おおぜいが参加してくれて驚いた園庭の研究会。職員が50人もいるなんて!
設計士が作成、回収、報告してくれた園庭アンケートにもきっちり応えてくれた、個性豊かな職員たちや、畑の土作りにこだわって聞いてくれた熱心な理事さん。
作業中にも気安くお声掛けをいただきました地域の皆さん。
そして細かな打ち合わせや変更にも積極的に対応し、マメに動いてフォローしてくれた若き設計監理者さんと、飄々と見えて実はマジメで人懐っこい現場監督さんは、たくさん無理を聞いてくれました。


ほんとうにありがとうございました。
今はやっとスタート地点ですね。皆さんの知恵と思いで、この場所を充実させながら、これから始まるおおきな変化を、子ども達と一緒に楽しみましょう。



芝生山に心地よい木陰をもたらす秋楡



 大きな楡(ニレ)の木。寝ころびたくなる広々とした木陰。遠くに大きなハッサクと枝を低く広げた筆柿。
ふんだんに完熟堆肥を鋤き込んだ畑の脇には、渋い石の水鉢も。
通りかかったオッサンふたり、「なんやここは?」「幼稚園ちゃうかー」「幼稚園やないやろ、こんなん・・・」 たしかに、派手な色の遊具などはござんせんが。



畑と砂場と芝生と木陰







栗を使った砂場制作の様子

特注の太い栗材を使って砂場を制作中。排水完備。美しい栗の木肌がなんとも気持ちいい。





南側にある0~1歳児の庭。
保育室前の広いテラスから庭は、レベルをそろえ全部地続きにしました。
フェンスの向こうには田んぼが残っています。


砂場は古い栗丸太で囲いました

柔らかい砂場の下は、暗渠排水。
あっという間に砂を広範囲にばら撒いてしまう子ども達の遊び方を見て、当初のいわゆるバンカーから形状と位置を変更。名栗(なぐり)丸太の古材を丁寧に加工して、しっかりと囲いました。栗古材の持つ温和な表情と、強くて腐れにくい性質から選定。念のためオスモカラーWR 使用。



3ヶ月後の0歳専用庭


0~1歳児専用の庭は、独立しています。
テラスの先は芝生のなだらかな起伏、イチョウの木陰の砂場には、琴引浜のような細目の柔らかい砂。
みかんやイチジクが実り、芭蕉が茂り、屋久島カンナが咲き、やがてフェンスもノウゼンカズラやブドウ(ナイアガラ種)に覆われていきます。
そうなるともう、ここは「園庭ではなくて天井のない保育室」(松方園長)。
文字どおりのバリアフリーで思いきりやさしい空間!





ちいさな植込みですが大きな変化と発見が待ってます


大運動会を想定し広く取ったグラウンド、その手前に許された、小さな植込みの山。
小さくてもここには、四季の変化に富んだ花木や山野草が30種類以上、約200あります。
発見の喜びとともに、この中にしゃがみこむ、ひとりひとりの気持ちをそっと受け止められるような場所になって行ければと願っています。





美しく面取された洗い場


 役物タイルで丁寧に面取され、すっきりとして美しい洗い場です。ごく普通の景色ですが、過去には派手な造形に走り、面取もまともに出来てない現場もありました。(設計監理の問題)
 また、広いグラウンドは、現場で要望した工法も採用していただき、全面的に暗渠排水工事が行われました。さすがですが、これが当たり前なのです。
開園してからでは困難な工事です。最初にステージを使いやすく、そのベースを見えない所までしっかりと作ることで、年々変化していく保育の状況に合わせて、スムーズに対応できます。





長いフェンスはすべて緑へ変化する

↓ 3ヶ月後

竣工3ヶ月後


フェンス緑化。1m当たり5株を、なんて「基準」をお役所は言ってたそうですが、
これだけの長丁場、「単調でやがてキタナイ」植栽はなんとしても避けたい。
1mおき(でも狭いくらい)に植えたツル植物は、マタタビ、サルナシ、原種テッセン、トケイソウ、アケビ、ムベ、ツルアジサイ、スイカズラ、ハニーサックルetc・・・ グランドカバーにはシロツメグサを蒔きました。

その前には、果樹の成木を植栽。たくさんの実をつけ始めた3mの暖地サクランボやスモモ(太陽)びっくりグミ、ヤマモモ(森口)、大実ザクロ、12本の大きなブルーベリーに、リクエストのフェイジョアも。あぁそれから広島の被爆アオギリの子孫も。
日当たりもいいし、さてこれからどうなるかな、私もわくわくしています。


     ●   ●   ●


 今回の仕事につきましては、補助金制度のあり方も含めて、建物以外の予算がほとんど組めない状況の中、子どもたちのためにいい仕事がしたいという、京都の(有)地域にねざす設計舎 TAPROOT や、最初に連絡をくれた藤木工務店京都支店の、子育て中の若い担当者達の、意欲的な努力がなければ実現できませんでした。 
特に、現場に学ぼうとするTAPROOT の設計士の向上心と行動力は、これまで出会った設計士のイメージを、ずいぶん良い方に変えてくれました。


さらに、ややこしい材料を準備し、遠くまで応援に来て下さった京都木村農園、
貴重な栗材は原田銘木と伝統工芸士おさむ工房、
そして頼りになる判断力と機動力を持った仲西造園に助けられて、
非常に短い工期にもかかわらず、ここまでたどり着きました。
みなさんに心から感謝したいと思います。ありがとうございました。

以上とりあえず、ご報告まで。



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