楡の木蔭にて:茨木市 水尾保育園2017年05月10日




楡と桜、木陰のぜいたく


        芝生

     そして私はいつか
     どこかから来て
     不意にこの芝生に上に立っていた
     なすべきことはすべて
     私の細胞が記憶していた
     だから私は人間の形をし
       幸せについて語りさえしたのだ


         (谷川俊太郎 )
   







グラウンドの暗渠排水工事中
    

  水尾保育園(社会福祉法人穂積福祉会/大阪府茨木市水尾1丁目)の新園舎建設にあたり 松方タミ園長に呼ばれて、職員たちの意見を聴きながら新しい園庭を作ることになりました。

大阪府茨木市の現場まで、京都の山奥から片道2時間。
とりあえずガンバって行ってみたら、たくさんの素晴らしい出会いが待っていました。


 



芝生山に心地よい木陰をもたらす秋楡



 大きな楡(ニレ)の木。寝ころびたくなる広々とした木陰。遠くに大きなハッサクと枝を低く広げた筆柿。
ふんだんに完熟堆肥を鋤き込んだ畑の脇には、渋い石の水鉢。



通りかかったオッサンふたり、「なんやここは?」「幼稚園ちゃうかー」「幼稚園やないやろ、こんなん…」 




畑と砂場と芝生と木陰








栗を使った砂場制作の様子


特注の太い栗材を使って砂場を制作中。排水完備。美しい栗の木肌がなんとも気持ちいい。






南側にある0~1歳児の庭。
保育室前の広いテラスから庭は、段差なく全部地続きにしました。
市街地ですがフェンスの向こうには田んぼが広がっています。



棚にはブドウ



細目の砂を使った柔らかい砂場の下は暗渠排水。
あっという間に砂を広範囲にばら撒いてしまう子ども達の遊び方を見て、当初のいわゆるバンカーから形状と位置を変更し、名栗(なぐり)丸太の古材を加工して囲いました。








3ヶ月後の0歳専用庭



みかんやイチジクが実り、芭蕉が茂り、屋久島カンナが咲き、フェンスにはノウゼンカズラやムベ、特注の名栗と檜で組み上げた棚はブドウ(ナイアガラ、ベリーA)に覆われていきます。
そうなるともう、ここは「園庭ではなくて天井のない保育室」(松方園長)







ちいさな植込みですが大きな変化と発見が待ってます


大運動会を想定し広く取ったグラウンド、その手前に許された、小さな植込みの山。
小さくてもここには、四季の変化に富んだ花木や山野草が30種類以上、約200あります。
発見の喜びとともに、この中にしゃがみこむ、ひとりひとりの気持ちをそっと受け止められるような場所になって行ければと願いを込めて。







美しく面取された洗い場


 役物タイルで丁寧に面取され、すっきりとして使いやすい洗い場です。過去にはカタログを頼りに派手な造形に走り、子どもたちにとって非常に使いづらいモノを造らせた設計士もいました。数年後 園により解体されましたが、プロなら面倒でも子どもの動きを観察して意匠は自分で考えましょう。







水尾保育園 暗渠排水工事中



 広いグラウンドは、現場で提案した工法も採用していただき、全面的に暗渠排水工事が行われました。
開園してからでは困難な工事です。最初にステージを使いやすく、そのベースを見えない所までしっかりと作ることで、年々変化していく保育の状況に合わせて、スムーズに対応できます。








長いフェンスはすべて緑へ変化する


↓ 3ヶ月後


竣工3ヶ月後



「フェンス緑化」
植えたツル植物は、マタタビ、サルナシ、原種テッセン、トケイソウ、アケビ、ムベ、ツルアジサイ、スイカズラ、ハニーサックルetc・・・ 一律に1mにつき5株をという役場の超密植基準はありえない。1m1株にしましたがまだ多すぎ。グランドカバーにはシロツメグサを蒔きました。



そして果樹の成木を植栽。たくさんの実をつけ始めた3mの暖地サクランボやスモモ(太陽)、びっくりグミ、ヤマモモ(森口)、大実ザクロ、12本の大きなブルーベリー。リクエストのフェイジョアと広島の被爆アオギリの子孫も。
日当たりもいいし、土もいい。さてこれからどうなるかな、私もわくわくしています。





     ⚪︎               ⚪︎





保育園は園庭の予算が組めないことが多い中
子どもたちのためにいい仕事がしたいという、京都の(有)地域にねざす設計舎 TAPROOT や、藤木工務店京都支店の、子育て中の若い担当者達の意欲的な努力がなければ実現できませんでした。 
特に、現場に学ぼうとするTAPROOT 岡村氏の向上心と行動力は、これまで出会った設計士のイメージをずいぶん良い方に変えてくれました。




さらに、ややこしい材料を準備し、遠くまで応援に来て下さった京都木村農園、
貴重な栗材は原田銘木と伝統工芸士おさむ工房、
そして頼りになる判断力と機動力を持った仲西造園に助けられて、非常に短い工期のハードスケジュールでしたが、なんとかたどり着きました。
支援してくださった皆様、協力してくれた職員や理事の皆さんに心から感謝したいと思います。ありがとうございました。

以上とりあえず、ご報告まで。







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