薔薇のプライド : 伏見2017年05月26日





ニュードーンと名栗のアーチ


不機嫌な季節の巡りあわせに遭っても
無農薬で育つ強さを持ち、淡く深い色彩と気品ある香りを放つ。
1本のニュードーン(New Dawn)のプライド。






New Dawn




ニュードーン





構えない構え : 伏見2015年05月14日





住む人の生き方や好みにあわせて、明るく暮らしやすくしました。
2年かけて、少しずつ変わっていく様子です。





Before 〈着工前 庭側〉


勝手口 着工前
 





   ↓ 
 〈ブロック塀や門柱門扉を取り去って工事は続きます〉



勝手口を壊して工事中






  
かたちが出来てきました。


完成 



   ↓ 

冬。庭の奥の方は、生きた土作りをして、とりあえず今年はトマトと茄子の畑 。
そしてさらにその翌年には↓こんな具合に。椿は「月の輪」 桜は「関山」、
奥の四ツ目垣は、コクテールの成長に合わせるようになんと、音符のように波を打ちました!





トマト茄子の後は椿「月の輪」と関山桜に



  
After 〈完成〉




春。仕上げは、名栗(ナグリ)の名人原田氏に制作をお願いしていた、大きな曲がりの山名栗を使って、薔薇のアーチ。名栗とは腐れにくく丈夫な栗材を手斧(チョンナ)でなぐったもの。熟練の手にかかると、全くささくれず、栗独特の艶肌が見事。
支える柱もほぼ無節の栗、10cm角。こちらは伝統工芸士おさむ工房に無理をお願いしました。
品のある素材は、それだけで美しく温かさを感じます。一流の職人たちの親身なご協力やアドバイスには、ほんとに感謝です。






名栗のアーチ、栗の柱で完成。


町並みの雰囲気も、やわらかくなりました。







翌年の春には


そして翌年。花が繋がりアーチの完成。(2017/05/24)






    
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内側から見ると…

          Before〈着工前〉


勝手口着工前 (中の様子)





           
          After 〈完成〉




勝手口跡(中の様子)









名栗のアーチ








3年後


ヒノキと竹で組んでみた2個の四ツ目垣風の衝立は、あちこちに軽く移動出来て景色の変化も楽しめ、思いのほか重宝しているようです。
石畳のテラスには、いざという時、車を2台入れられます。







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同じように玄関前も、コンクリートの塀や門扉を半分取り去り、石畳のスロープにしました。


Before  玄関側

〈左袖の塀を取り去ったところ〉


玄関 左袖のブロック塀を取り去ったところ




   ↓
After 玄関側

〈水栓柱やホースは、分厚い古板石の裏側を使って井戸風に納めました。左手のコンパクトな竹垣には、この夏、大輪の朝顔が絡みます。〉




玄関完成 「大輪の朝顔を植えようか」





庭のバラたちも,
最小限の手入れにもめげず、やさしく、おだやかに咲いてくれています。




春がすみとアゲハチョウ



春がすみとアゲハチョウ








ピース


ピース







しのぶれど


しのぶれど







夢










ニュードーン


ニュードーン










ヘンリーフォンダ


ヘンリーフォンダ










黒蝶


黒蝶









ファイルフェンブラウ


ファイルフェンブラウ











建仁寺垣とニュードーン : 伏見2012年06月22日


 たとえば代が変わったり、駐車場が必要になったり、バリアフリー化などと、その場所で根を張って暮らしていくために必要な改変。
住むひとに寄り添い、地域に落ち着きとうるおいをもたらす。庭の改修とは、きっとそうゆうこと。

Before
Before:大きな中国製「春日燈籠」が支配する庭
 

 アンバランスな印象。巨大な中国製春日燈籠の迫力(圧迫力)が、ひたすら視線の前に立ちはだかって、なんだか落ち着きません。
                            

After
After:巨大な中国製燈籠をあえて撤去。木々は整姿剪定。


 御香宮を氏神にまつるご町内。ご家族のライフスタイルやそのおはなしを聞くにつけ、2mを軽々と超える大きな中国製春日燈籠の扱いがネックになっていました。

 日本の春日型燈籠をデフォルメしたようなデザイン。農協も売りさばいたため日本の田舎では根強い人気があります。大型で手軽に威張りたい向きにはたいへん便利な素材ですが、残念ながらステイタスにはなりません。
 大型になるほど、暮らしや庭との調和、品の良さといった感覚からは遠ざかって家庭では難しい素材だと感じています。シンボリックな扱いなら使えそうですが、この燈籠は地震にも弱いため、使うには注意と工夫が必要かと思います。

 
 このお宅の場合は、庭でお孫さんたちが遊ぶこともあって結局撤去することになりました。

   
 
 そのあと、お宅にあった古い素材 ― 雪見や景石、水鉢、臼石、植栽、鉢植えなど― を見つけ出しては、ずらしたり、深く沈めたり、時にはひっくり返したりしながら使いました。
 石畳は、軒内からつながっており、将来の駐車場化にも備えて十分な広さを確保。洗濯物も思い切り広げられるし、小さい子どもたちが来ればプールやBBQだってできます。

 この庭は、奥さまの好みに添ってこれから大きく変わり始めます。
 右手前には竹組でバラのスクリーン(袖垣)を作りピンクの春がすみや紫の小花ファイルフェンブラウなどを植栽、今後はさらにお好みのバラを配置し育てていきます。和風にバラ。四季を通して、大胆に個性的に変化していく様子が、とてもたのしみです。

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池とヘンリーフォンダ
 
 

  一年後のようす。 枯池にはヘンリーフォンダ。
 建仁寺垣には、この1年で4mも伸びたニュードーンが誇らしげに咲いていました。

建仁寺垣とニュードーン
  
 

日本一の保育園になろう :右京2012年05月20日



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外構には、地域の風土とともに、その場所のあるじの姿勢や人格が反映されます。
より自然なバランスを追求しつつも、常にそのように意識して作るのが私たちの仕事です。
デザインは思想といわれます。私達町屋の職人は、自分の培って来た美意識を相手に押しつけたりはしませんが、だからといって相手に迎合するわけでもありません。
思いを受け止め、地域現場の生活と、土、水、風、光そして四季など自然との調和を模索する、
あくまで人と現場に固執するのが私ども職人の仕事であって、ガーデンなんとか等の今風の片仮名職業ではないことを、ご理解いただけたら有り難く思います。
ちなみに造園業は 分類上、第三次産業(サービス業)の建設業ではなく、第一次産業である農林水産業に属します。おもしろいですね。

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開園1年後 2013/05/19
          (2013/05/19)


 みつばち菜の花保育園
は、100人を超える待機児童をかかえる京都市西京区の社会福祉法人みつばち福祉会 みつばち保育園(2001年開園)に次ぐ、法人二つ目の大規模な認可保育園として右京区に今春(2012年4月)開園した。前身は、ひかりかぜ保育園。


 設計監理は、もえぎ設計。泥臭さを残したみつばち保育園のたたずまいとはうって変わって、RC造りとはいえ、広いタイル貼りのエントランス周りや園庭を縦断する長い園路、イベント用に特化したような異常に高い天井の大ホール(園庭よりも広い!)、園庭と園舎をつなぐテラスの先に土はなく、代わりに土色をした1m幅のウレタンを全面に敷設、職員用にはフルオートの電動トイレ(じきに故障したが)など、一見して「リッチで都会的」。見学など来訪者への見栄えを強く意識した、今風の設計。もちろん施主の意向なのだろうが、同じ法人、同じ設計屋(設計者は別人)にしては、コンセプトも、かけた「お金」もまったく違っている。


 しかし、つくる会、保育士、調理師たちの開園までの努力にはすざまじいものがあった。
「子ども」という未来そのものに向き合う仕事のせいか、この保育士や調理師たちの謙虚で地に足がついた前向きな姿勢や個性光るセンスには、随分とヒントや力をいただいた。
それぞれの目は輝き、自分なりに考え、話し、動いていた。このことを忘れてはならない。


 新たな場所でもあり、いろんな困難が待っているだろうけど、何よりも働く仲間の心を大切にして、ゆっくりと京の子育ての核のひとつに育って行って欲しいと願う。






2012年4月1日開園 
          (2012年 竣工直後)
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 外構工事にあたっては法人よりご指名をいただいた。
 おかげさまで、前身ひかりかぜ保育園の中で、園長や保育士、調理師たちと自由に話し合い、子どもたちにも気安くお声をかけていただき?ながら、集中して設計し提案することができた。いくつかは、設計監理との関係で実現できなかったが。


 さらに、アドバイスや新しい情報をいただくなどいつもたいへんお世話になっている、樹木、草花、銘木、竹、石、肥料など、長い間京の庭を支えてきた、信頼するそれぞれの専門店のバックアップのお陰があって無事に施工できたことに、いつもながら感謝するばかり。
 すべてがこの場所に馴染み始めるのは数年先だが、とても楽しみだ。






植栽工事中の みつばち菜の花保育園
 
 植栽工事の様子。松の流木とアテ(アスナロ)の出節丸太を運び込みノウゼンカズラのアーチを準備中。門扉の大きさや作りが意外と貧相でアンバランスな印象だが、コンクリ塀や園路と共にもえぎ設計の指定で、増田組のお仕事。





白梅(青軸)







ゼロ歳児専用の芝生山を造成中
  
 菜の花の植栽については後述しますが、問題は写真の左半分。
仕事は、きれい事ではないので、今後の為にあえてメモし提起しておきます。


 左手前の、かさ高いオブジェ風の手洗い場は、ただでさえ狭い園庭の動線を塞ぐだけでなく、複雑な形状からか面取の役物タイルも使われず、カドが立ってしまいました。
そして当初は設計されていた、水はけが非常に悪い園庭の暗渠排水工事は、なぜか全て中止にされた上に、この広大なタイル三昧。
 さらには、ウレタンのぷよぷよとした不自然な感触の「土」モドキ。これはテラスから15センチもの段差で打設されグラウンド レベルを恒久的に決定づけました。この大きな段差は、年長ならともかく小さな子どもの園庭への自然なアプローチに、影を落とすと思われます。


 園庭地下には解体した蝸牛社ビルの基礎が浅く残っていることもあり、近い将来、全く排水出来ない土はドブ臭い異臭を放ち、どこにも接続されてないグレーチングの排水桝は泥とボウフラの溜まり場となり、広いウレタンは太陽で劣化して千切れ園庭に混入することは、たやすく想像できます。『子どもらに土と緑と太陽を』という法人のスローガン、こうなると…??


 各自がとても忙しくて、疲労も溜まった状態の中で、想像と議論が尽くされていない思いは残るけれども、本来なら黙ってプロの設計事務所に任せるような細部に、大きな問題が出ているという現実。
 今は出来るところまで精一杯やって、あとは開園後の様子を見ながら、みんなの思いで少しずつでも良くして行けるように期待し、協力して行くしかありません。

                               



                                 
       
ゼロ歳児専用の庭(姫高麗芝、コブシ、ホオノキ他)

 0歳児専用の庭。掃き出しの窓からそのまま出て、じかに触れる土と緑。窓枠下のトタンが熱くて、小さなテラスか縁側のようなものが欲しかったが、ウレタンが付いてくるのも困る。わくわくするかたちと、木陰を作る植栽樹種、維持方法や年長児とのかねあいにも苦心した。





これはミツバチではなくて、ちっちゃなアブのようです。
 

 地元の農家と、素敵な保育士たちの協力で大量の菜の花を植栽、竣工式に間に合った。

 保育士たちは、お願いしていた通り、仕事(お散歩)中に菜の花畑を発見し、その所有者に頒けていただく話をつけておき、勤務終了後に連れだってブルーシートやスコップを手に、菜の花畑へ掘り取り作業に向かった。
大量の菜の花をつめ込んだ保育士の車がエンストし、日暮れてJAFを呼ぶ事態にも、彼女らはニコニコしていた!





荷車は鋳鉄と栗製の本物

最初に咲いたのは0歳児室前のハナミズキ。奥はマユミ。井戸水が出てくる黒い散水ホース。





 開園1か月目には、つるバラが咲き始めた。

四ッ目垣につるバラ





 (1年後 2013/05/19) 

開園1年後 2013/5/19

                  





つるバラ 春風

            春風





つるバラ 春がすみ

            春がすみ





大きな花、素敵な香り ポール・ネイロン 

           ポール・ネイロン





 道沿いには春風、サマースノー、アリスター・ステラ・グレイ、春がすみ、アイスバーグなど。
中に咲くオールドローズはポール・ネイロン、大きな花で道往く人に「牡丹ですか?」と尋ねられた。
 どれも棘が少ない品種を選んだつもり。






北側 職員通用門のシダレウメ







「職員のこころと感性をこそ」という願いをこめて


 北側の職員通用門には、面取された御影石を積んで植えマスを作り、京都木村農園のみなさんの強力なご支援のお陰で、立派なシダレウメを植栽できた。
 いつも元気な挨拶をくれ、作業してると背中から「監督」してくれたお向かいの染め屋のおばあさんも、この花を見たとたん 『ありがとぉ! 殺風景だったこの通りがとても良くなったわ』。





狭い所に多様な配管が集中する北側。鉄骨仕込みの御簾垣のキワに大量に土盛りして植栽。

北側、年長保育室前。その染め屋のある保育園の裏通りは、静かな京の住宅街。

 こちら側の地域住民の一部の方から『子どもの姿を見たくない』『声も聞きたくない』という強い要望があったため、図面では高さ1.9mものRC(鉄筋コンクリート)塀という恐ろしく暗い設計だった。
既に増田組の塀基礎工事は進んでいたが「塀の中の子ども達」はどうしても避けたい。関係者の努力を得て、空気と光を通す御簾垣と常緑樹の植栽による目隠しへと、大幅に変更することができた。

 とはいえ、この場所は植栽可能な奥行きは1mもなく、陽も当たらない。地面は既に完成したRC塀基礎と複雑な配管で占められていたが、徹底した改良土による大幅な土盛りと、ドラムで面取した御影石の土止め、悪条件に耐えそうな樹種、下草の選定で、何とかなったようだ。
また御簾垣には、厚さ5㎜のアングルを加工し仕込んだ。




 

大島椿

 最新の設備を誇り、元気な調理師たちが早朝より働く調理室は、この保育園の心臓部。窓の外にはパッと明るい伊豆大島の椿。
 働く人たちがいい仕事をするために、気持ちよく過ごせるのはとても大切なこと!

 



メジロたちにミカンを吊るす

 成長した椿に、いつも遊びに来てくれるメジロ達へ、栄養士がミカンを吊るしてプレゼント。





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     ≪  蝸牛社のこと 


蝸牛社


 みつばち菜の花保育園が建つ前はーー

 見事な壁面のつるバラや、歩道沿いの花や実が地域や道往く人に愛された「蝸牛社」(かぎゅうしゃ)のビルや染工場の景色があった。保育園の外構にバラを使ったのは、長く地域に親しまれ愛されたこの蝸牛社の景色に、敬意を表す意味合いもあった。
蝸牛社の深い善意なしには、みつばち菜の花保育園はありえなかったことを忘れない。

 以下は解体直前の蝸牛社のようす。


 移植できそうな樹木や草花は丁寧に掘り取り、いったん引っ越しした後、みつばち菜の花保育園完成後に再び移植した。



解体前の蝸牛社 花がいっぱい



表は五階建てのビルだった。

蝸牛社ビル



蝸牛社ビルからの眺め

蝸牛社ビルからの眺め





解体前の蝸牛社ビル



  ビルの奥には三階建ての大きな染工場があり、地下には壊れてはいたが大規模な工業用井戸が設置されていた。井戸は、緊急時には地域に役立つこともあり、保育園はあらためて井戸を掘りなおした。水量、水質も折り紙つき。




取り壊しを控えた工場内部。

蝸牛社染工場の内部


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 そして激しい雨の降る五月の日、
解体を目前にした蝸牛社ビルで、
準備を重ねた「ひかりかぜ保育園」のみなさんは、地域に打って出た。

解体を目前にしたビルで地域に訴えた




雨の中、続々と詰めかける住民の方々。

雨の中、詰めかける住民





こころをひとつに打って出たことを忘れてはいけない




( ひとりひとりが周りを見ながら自分なりに考え、喋り、懸命にもがき続ける現場に出会い、ともに仕事ができた幸せに心から感謝しています。
その遠慮ない勇気とハングリーさを、思いやる心とみずみずしい感性を
組織が大きくなっても、ボーナスが貰える身分?になっても
忘れないで、なんとかうまく次につなげていってほしい …… 
それは本当はとても難しいこと、でも そう願っています。)


 

工事見学会


現場見学会(2012/01/14)






栗とコーネリア : 美山2001年06月13日




栗丸太のアーチにコーネリア





無農薬で見事に咲くつるバラ コーネリア。 奥にはニュードーン。
都会住まいで、大の競馬好き!の映画監督のご主人も時にはいらしていましたが、普段は奥さまが愛犬と 田舎での静かで丁寧な暮らしを楽しまれていました。
慣れない雪の坂道で滑ってころんで手首を骨折されたこともありました。
着雪による枝折れのはげしいミモザの雪吊りを毎年指示され、雪国では珍しく、私の植えた苗木を大木に育て上げられました。



バラのアーチや、ナイアガラ(ぶどう)の棚などには機械化で使われなくなった稲木干し用の栗丸太を買い受け、ふんだんに使いました。きれいに管理された芝生は、愛犬とのリビングルーム。



栗(山栗)はとても腐れにくい、伝統的高級素材ですが、此の頃は山でもあまり見かけなくなりました。(若木は片端から鹿に食べられてしまい、次世代が育ちません。)
栗の又を使ったアーチやパーゴラは日日庵オリジナル。10年経ってもびくともしません。
曲線のテーブルベンチは伝統工芸士おさむ工房に依頼しました。






ナイアガラの棚に、誂えたテーブルベンチ







栗丸太とクロモジの幹で作ったアーチ


 




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【バラやクラシックを愛した父のおかげで生まれた時からたくさんのバラがありました。バラを使う造園屋は少ないけれど、特につるバラには強い品種も多く、修景に使えます。 無理な四季咲きにこだわらなければ、そんなに肥料漬、農薬まみれにしないで、自然に育てられる品種はあると思います。生きた土にするなどの工夫やメンテナンスは必要ですが。】