西村のおばさん : 右京 ― 2012年12月29日
お訪ねすると、いつも気軽にお茶をたててくださいました。
西村のおばさんは、西村宗延という名の裏千家茶道と専慶流華道の教授でした。
やさしい気配り、親しみのある表情、そして気さくな性格。当初は教授とも知らず、庭仕事にお伺いしておりました。
だんだんと足元が不安になっても、年々視力が落ちても、ずっとお一人暮らしで、寿命が尽きるまで気力で現役を貫かれ立ち続けられました。
数ヶ月前に庭のお手入れでお訪ねしたときも、私のために近くのお店までゆっくりと歩いて行き、ここのネタはちょっといいのよとお寿司を買ってきて、人生振り返ってみたら70代の頃がいちばん自由で最高だったわ、なんていろんなお話をしてくださいました。
若い人たちには、伝えたいこと、感じてほしいことがたくさんあるって、家元での行事には常に先頭に立って采配しておられました。そのあとは暫く寝込むことになっても。
免状交付の立会いから帰ってこられると、いくらお茶人口が減って経営がたいへんだからって、こんな人に免状を渡して大丈夫なのかしらと思ったって……
いつもさらりと本音で接してくださいました。
庭の手入れや改修は、光の動きで判断し、指示されました。
それはまだ視力の弱い乳児が、庭で風に揺れる花を見つめるような新鮮さを感じました。
仕事に入るたびに感じた信頼は、私にとってきっちりとした判断を迫られるような緊張感がありました。小手先の技術ではなく。
美しくなった木々を誉めても、植木屋をほめることはなかった(あたりまえだが)先生が、私が行くようになってから、「今までの植木屋は何だったのだろう」と、おっしゃてたことを後にご遺族に聞かされました。最大限の褒め言葉と受け取っておきます。
ころっと逝きたいとおっしゃってて、
ほんとうにそのとおりにされました。
気安いおつきあいのなかで、たくさんの大切なことを教わったことに気がつきました。ありがとうございました。
とても楽しい時間でした。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
最近のコメント