海の鐘:不知火海2023年01月17日




美しい水俣湾



高校の同級生仲間だった友人の
働く現場を見ておこうと思い立ち 
早くに彼が根を下ろした
熊本県水俣市をはじめて訪ねました

不知火海 向こうは天草 左は鹿児島県出水市 
季節には大きなナベヅルたちが
頭の上を渡っていくそうです







水俣湾



穏やかな水俣湾に浮かぶひょうたん島のような恋路島
この広大な公園の足元には
湾内に最大4m堆積した有機水銀入りのヘドロと
ドラム缶に詰め込まれた不知火海の魚たちが
無数に埋まっています

 




封じ込められた魚たち








死の海の上に供えられた手彫りの野仏や
祈りの墓標たち 「魂石 」



埋立地の魂石










石牟礼道子さんの句


 さくらさくらわが不知火はひかり凪  (なぎ)
 祈るべき天とおもえど天の病む       
     
      石牟礼道子さんの句です







埋立地の魂石










埋立地の魂石










埋立地の魂石










埋立地の魂石


  







水俣湾埋立地の説明











チッソ水俣工場


水俣駅の正面に構える 広大なチッソの工場
入口にはガードマンが立っていて 
じっとこちらを見ていました




 




封じ込められた魚たち


36年間も有機水銀を流し続けた
百間(ひゃっけん)排水口


奇跡の星に誕生したすべてのいのちは 
皆つながり助け合って生きています
新参の人類の思い上がりがひき起こす
傲慢な破壊行為


「水俣病」はここから始まりました
患者さんたちは奇病と差別され 
水俣病は何度もフタをされていきます
誰に? なぜ?




チッソの百間排水口


現在の百間排水口と




「百間排水口」一番札所


その正面にある 新潟阿賀野川の石に彫られた地蔵
水俣病巡礼八十八ヶ所 一番札所 とあります
故 川本輝夫さん(水俣病患者連盟委員長)が建立しました
刻まれた文字の墨が薄くなっています





6/18 撮影永野
                  (撮影永野)

百間排水口を背に 地蔵にお経を唱える僧侶












水俣病慰霊の碑


埋立地に立つ水俣病慰霊の碑と二つの鐘



平成25年10月27日 明仁天皇と美智子皇后が水俣を訪れます
両陛下の強い希望で 胎児性水俣病の患者さんらとも会い
長時間 丁寧に言葉を確認しながら熱心な対話をされました
水俣病公式確認後も12年間 国も県も排水を止めなかった事に


   患ひの元知れずして病みをりし
      人らの苦しみいかばかりなりし   天皇










水俣病慰霊の鐘

   
    山の鐘







慰霊碑の鐘


     海の鐘






邪魔はしないからと
友人の現場を覗きに来たのですが
彼は この田舎職人に貴重な時間をさいて
精力的に水俣を案内してくれました


綺麗に整えられた鎮魂の景色からは 
患者さんたちの苦しみや命がけの訴えも
激しい差別に癒えることのない傷も
支援者たちの何十年にもわたる格闘も
想像するのは難しいけれど 
水俣病歴史考証館のリアルな展示物が
その厳しさを伝えていました
ここに最近 丸木位里さん丸木俊さんの「水俣の図」も
新たに加わったようです


この場所で素敵な人と出会いました
その人が初めて書いた 素晴らしい本です





みなやっとの思いで坂を登る 永野三智





決してむつかしい本ではありません
水俣病患者相談の日々が素直に綴られています
ぐいぐいと引かれるように読み進むうちに
潜在患者含め20万人にも広がる水俣病の実態や
胸につかえたまま語られなかった真実 そして
まだ何も終わっていない現実が伝わってきます


思い切って相談に来た患者さんたちだけでなく
長くよそ者として生きて来た私の旅にとっても
水俣の地で生まれ育った彼女の姿勢や生きざまが
ある種の安心とあらたな希望を与えてくれました


彼女には初めてお会いしましたが 
友人の娘さんだったのは驚きでした
文中何度か登場する父親に 
子育てや 父子の葛藤 奮闘を想像しつつ
彼女の半生の記としても 
体温を感じるその文章とともに
感慨深く読ませていただきました



   永野三智 (水俣病患者センター相思社)

      発行:ころから 1800円+税




本書中 原田正純医師 (胎児性水俣病を発見) の言葉より

「環境汚染によって食物連鎖を通して起こった中毒なんて
いうのは人類史上初めてです」 
「現在世界中で微量長期汚染の胎児に及ぼす影響を議論し
ています 日本で調べれば一番ちゃんと分かったわけでしょ
だけど今となってはもうわからない」



     *     *



  微量長期汚染  食物連鎖… 
    エスカレートする酷暑極寒豪雨 そして核
  自然のルールを破り 命よりお金をモノサシにして
  共に生きる力を退化させたこの文明が滅ぶ時
  これまでの歴史と決定的に異なるのは
    地球の生態系を根こそぎ巻添えにしてしまうこと


  あの安倍さんでも躊躇した岸田政権の超軍拡や原発回帰
  かくして廃炉不可能のまま福島も見捨てられるのか
   


    京都では地下水脈無視の北陸新幹線延伸にも呆れますが 
     《 リンク先はグリホサート(ラウンドアップ・ネコソギ・
  サンフーロンほか)に関する貴重な記事です 》







  ....................................................................








 〈 追記 〉  2023・7・1


  水俣病は過去ではなく現在進行形





熊本日日新聞より

     百閒排水口で 市の説明なき解体に抗議し
     座りこみ読経する僧侶 
              (熊日新聞7/1より)







初めて訪れた水俣の町
穏やかで美しい水俣湾をのぞむ集落は かつての温かい
営みを想像できる懐かしいたたずまいを一部残しており
水上勉の小説の情景を思い出す(不知火海沿岸・海の牙)


一方で 今も駅正面を占有するチッソの威容
町の妙に静かな風景に 何か意思を感じる緊張も匂い
怖いような不思議な気持ちでした


埋立地の公園の中に限って 歴史を伝えてはいます 
故 川本輝夫さんは 後世の為に八十八ヶ所の巡礼場所が
水俣周辺に出来る 作らなければと信じておられたと
思いますが 今も彼が作った一ヶ所目の百間排水口のみ
市内の道案内の標識や看板も なぜか少なくわかりにくい


「水俣病を忘れたい市民もいる」と水俣市長は以前
ジョニー デップの映画MINAMATA上映会の後援依頼を
拒否したり(熊本県は快諾した) 最近では百間排水口を
撤去しようと試みたりしていますが 胎児性患者さんを
はじめ 加齢とともにさらに近隣に広がりを見せる潜在
患者 症状悪化に耐えて生きている患者たちにとって
チッソ(JNC)労組が支持母体である市長の「忘れたい」
配慮は さらなる差別や分断を招くと危惧します


忘れてはいけない
豊饒の海を殺し 生き物のいのちと暮らしを破壊し
36年間にもわたって毒を流し続けられたのは何故か
人類史に刻まれる大失敗に対し
それぞれの場所や方法でちゃんと向き合わないと 
共に生きる人々の活気も 町の未来もありません
その上で私たちは美しい水俣をもっと身近に
もっと誇らしく感じたい
同じことは 原爆や福島原発事故を経験した
この国にも言えると思います


「水俣病が起きて差別が起きたのではなく
  差別のあるところに水俣病が起きた」(原田正純)




水俣を訪ねてみたいと思ったら 
エコネットみなまたに相談してみることをおすすめします
思いや具体的な希望にも応じてくれると思います


「今の水俣を巡り私たちの暮らしを未来につなげるツアー」


    〒867-0023 熊本県水俣市南福寺60 
    econetminamata@orion.ocn.ne.jp
           TEL:0966-63-5408    FAX:0966-63-3522
  








変える 変わる : 園庭二題2021年04月01日





改修前




再び 西京区のみつばち保育園にやって来ました
これは 小さい子用の洗い場

ヒノキをふんだんに使った木造園舎に
似合わないブロック塀のような洗い場は
足場が狭くて使いにくい上 死角も多く
ちょっと暗いコーナーになっていました





改修前








改修前





改修のきっかけは
コロナ禍での洗い場の充実はもちろんですが
構造的に 
コンクリートに体を擦りながら水を求めるしかない 
小さい子どもたちの動きと
水の出方  …拡散するシャワーではなくて  
流れ落ちる水の感触 の大切さを
丸国園長にお聴きしたから


浮かんだヒントは
清水寺の音羽の滝でした






改修後





それで こうなりました

自然の素材感覚を大切に
太い栗の木と ぽくぽくとした御影石(花崗岩)を使って作りました











子どもの姿を隠さず 周囲にもストレスを与えぬよう
5ヶ所の給水を 風化した遺跡のように柔らかく
ミニマムにしつらえました
床面積を5倍に広げて
0歳児室から外の水場や砂場まで 
ハイハイでもスムーズに動けます



一筋の滝は
太い栗の木の中をくぐり抜けた水が 
上から落ちて来るしかけで
子どもたちは自分で
手元のかわいいハンドルを使って 
滝の水量を自由に調節できます
管理用のバルブも設置して それぞれの水圧も調整可能






改修後




出来上がってみると
昨年作った藤棚の下で
小さい子どもたちの露天風呂 大人の昼寝や
水圧をかけて滝修行?にも良さそうな
明るく愉快な遊び場になりました


今度はテラスの拭き掃除が忙しくなるかも…







園長のブログより







みつばち園長のブログより





子どもたちのいろんな様子を
たくさんブログに上げてくださいました
ありがとうございます







半年後

  半年後の風景







     *               *               *






さて もうひとつは 開園10年目を迎える
右京区の みつばち菜の花保育園です


かつては青々としていた芝生山も 事情により年長児にも開放したので
あっという間に ごらんの状態


あなたがこの子なら 何をして遊びますか?



改修前




もっと大胆に広く使って
ひとりひとりの状況に応じて 
色んな遊びが浮かぶ庭にしましょう
ということになりました





改修後




左の0-1歳児の建物と土山とを ヒノキのぬれ縁で床との段差なしに接続し
造成した低い山々をつなぐのは 太い八角名栗の一本橋

橋は景観の要(かなめ)として 園庭全体に 自然な落ち着きと楽しさも演出します
栗との対話から生まれる伝統的京名栗 独特の素材感は心とカラダにもおすすめ (できるだけ はだしでね) 
ただの止まり木やベンチ代わりでもいいし ジャンケン遊びでもいい
尺取虫になってみるのはどうかしら 遊び方は無限です

18ミリ厚アルミ板を加工した基礎で 
橋の位置も変えられます





改修後




さらに 年長児用と年少児用それぞれに 
登れる樹形の 太くて大きな樫の木を 2本用意しました
( 京都木村農園と仲西造園の知恵と力で搬入植栽できました 感謝です‼︎)





ひっそりと遊べる植栽




また 四季の変化や実を楽しめる中低木を増やして
疎密のメリハリをつけ 狭くひっそりと遊べる木陰も複数確保
眺めるだけでも楽しい緑のグラデーション





園庭全景




大きくなったコミカンの木を慎重に移動し
開園来 格好だけで使えなかった手洗い場も撤去して スペースを作り
年長用の綺麗な洗い場を新設 広くて使いやすく年少にも人気です
(この洗い場はタップルート岡村氏の設計 増田組の施工)


狭いと思っていた園庭は
ほんとはこんなに広かった⁉︎







春のエントランス


        新緑のアプローチ








          *               *             * 





ところで
植物にとってみると 園庭は
根元を踏み固められて根呼吸は困難になり 枝は折られ 未熟果はむしり取られ
草も生えないほど 不自然で過酷な現場です 
優しい姿でも 彼らは必死にそこに立っているのです


木登りするなら1年後から 
できるだけハダシでお願いします
保育園では登る頻度が激しくて 
靴では樹皮が剥けてしまいます


木々が大切に愛されて 
みつばち本園の銀杏や 西山園舎の大桑のように
人間の子どもたちの育ちを 
受け止めてくれるような関係になることを
願うばかりです …







西山園舎の大桑2






はっぱのおまつり

    
         



大桑の木を剪定すると 
子どもたちは手に手にその枝をひろって 
輪になって踊りだしました
「はっぱのおまつり」だって
アフリカにいるみたい!










土に願いを:乳児の瞳に映る宇宙2020年02月18日




    陽だまりに大根吊るす保育園。
    


大根干しがよく似合う






昨秋より、園の休日ごとにコツコツと外構を改修させていただきました。
現場は、2001年に開園した京都市西京区のみつばち保育園の本園です。
開園20周年を機に、見直したいという相談を受けていました。




2001年開園当時のみつばち保育園

(2001年開園当時のみつばち保育園本園。更地の園庭。)




一般的に建物ばかりに目が行きがちですが、保育現場の外構は、常に0歳からの子どもたちが、自然を見て、触れて、舐めて、登って、こころを形成しながら育つ場所です。普段にもまして、自然な材料、安全で肌になじむデザイン、使いやすく、楽しい配置の設計、そして施工の全てにプロの質と配慮が求められるのは、あたりまえ、ですね。
庭と建物を有機的につなげることは、茶庭にも通じる造園の基本でもあります。
今回改修したのは、おもに次の3ヶ所です。





            ❶         ◯        ◯




Before 


門扉の現状


これまでに、4回以上壊れて作り直されて来た門扉は、そのたびに、20年前の設計と同じデザインで新しく作り替えられるのを目撃して来ました。2012年、右京区に開園したみつばち菜の花保育園(→拙稿)の門扉も、同じデザインで、開園数年後には壊れて、これまた同様に更新されています…。何の縛りでしょう?  素材は輸入材(米ヒバと中国産の竹)で出来ています。
現行は設計屋や建設会社を通さず建具屋に変えたようで、当初のデザインを踏襲しつつ枠を太くするなどの工夫をして、それまでよりは長く持ちましたが重くなり、子どもたちが扉に乗っかる事を想定した強度まではありませんでした。




After 


栗の門扉




みつばちのレリーフ




素材は栗の木。頑丈な木組に、大きなゴムのキャスターを付け、乗っかられても平気。
栗の木は丈夫で腐れにくく、古くなるとさらに表情が出て、やさしい木のぬくみは消えません。
庭や建物にあわせながら、シンプルで安心感のある落ち着いた風景を意識しました。また長く愛着を持ってもらえるように、ミツバチのレリーフも入れました。
扉本体の制作は、京都の数寄屋建築の老舗も頼りにしている伝統工芸士 おさむ工房にお願いしました。





    ◯        ❷        ◯





Before 


自転車置き場の現状


こちらは保護者の自転車置き場。





駐輪の現状


コンクリート基礎に小さな板石を等間隔にあしらって埋め込んでありますが、その洒落た段差のおかげで、子どもを乗せた自転車のスタンドが立てられません。スタンドはいつも桂徳小学校の通学路である道の上でした。






斜めの扉が作ったデッドスペース


さらに、斜めに設置された輸入材(米松)の扉のため、広い三角形のデッドスペース(どうにも使えない空間)を生み出していました。
設計者は自転車置き場で何がしたかったのかな? チコちゃんに叱られるよ。





After 



石畳の自転車置き場



整形して駐輪場を広げました。殺風景なコンクリートや砕石敷ではなく、落ち着いてあたたかみのある石畳に。道路のレベルに合わせ、目地も工夫し(蒲鉾型黒目地)、段差はありません。
左右の足元には季節の草花も咲くように。
真ん中に出来たマンホールは最終雨水桝。地中に埋没していたのを工事中に発見、セットしなおしました。




自転車も楽にスッキリと。





扉の向きと位置を変えた


三角形のデッドスペースも解消。私の3tトラックも楽に駐車できるほどの広さに。





栗の扉にミツバチのレリーフ


通用門は正門とおそろいの栗の門扉。美しい杢目、ここにもミツバチのレリーフを。
もちろん、丈夫なキャスターも付いています。さっそく目の前で登られましたが。





     ◯   ◯        ❸         






Before 


0歳児室側テラスの現状


0歳児側テラスの様子。専用の柔らかい砂場も正面にあります。





0歳児前テラスの現状


左が0歳児、向こうにホールという配置。
玉すだれのように吊るしてあるのは、子どもたちが収穫し、結び、干したタマネギ。





After 



ここに新設したのは、軒から続く京都産ヒノキの長〜い藤棚。
棚には微妙な勾配をつけて、雨水が伝い建物が濡れるのを防ぎます。



0歳児室の藤棚完成


おや? こっちを見てるね!

テラスの柱を掘り筋交(すじかい)で支える、単純な構造ですが、大人がぶら下がっても十分な強度があります。今後子ども達や保育士に、どう使われるかわかりませんから?





軒先藤棚


向こうのホールからの景色も、優しくて落ち着いた雰囲気に変わりました。
広いテラスを含め、塗装はすべてひまわり油ベースのオスモカラー製品を、二度塗りしました。







木のそばで遊ぶのが好き



制作中は子どもたちや保護者から、なにしてんの?これなに? と質問責めでしたが
京都木村農園が鳴滝に持っていた、一本の表情のある藤を植えたとき、
園庭と園舎がひとつに繋がり、園舎にもいのちが宿りました。
保育園施設という機能的な箱が、地べたに暮らす家のぬくみを得た瞬間でした。







銀杏に挨拶する藤


植えられた藤は、この日早速、園庭のヌシである銀杏に挨拶をしていたようです。
0歳児たちのこころに、毎日繰り広げられる 宇宙=四季の変化 がどう映るか…
なんだか、わくわくします。







8カ月後
  
          ( 10/1 )





森のほいくえん?

         ( 2021/9/10 )

一年たつと、こうなりました。
ちょっと管理をサボった? はい
でも いい雰囲気!







     

楡の木蔭にて:茨木市 水尾保育園2017年05月10日




楡と桜、木陰のぜいたく


        芝生

     そして私はいつか
     どこかから来て
     不意にこの芝生に上に立っていた
     なすべきことはすべて
     私の細胞が記憶していた
     だから私は人間の形をし
       幸せについて語りさえしたのだ


         (谷川俊太郎 )
   







グラウンドの暗渠排水工事中
    

  水尾保育園(社会福祉法人穂積福祉会/大阪府茨木市水尾1丁目)の新園舎建設にあたり 松方タミ園長に呼ばれて、職員たちの意見を聴きながら新しい園庭を作ることになりました。

大阪府茨木市の現場まで、京都の山奥から片道2時間。
とりあえずガンバって行ってみたら、たくさんの素晴らしい出会いが待っていました。


 



芝生山に心地よい木陰をもたらす秋楡



 大きな楡(ニレ)の木。寝ころびたくなる広々とした木陰。遠くに大きなハッサクと枝を低く広げた筆柿。
ふんだんに完熟堆肥を鋤き込んだ畑の脇には、渋い石の水鉢。



通りかかったオッサンふたり、「なんやここは?」「幼稚園ちゃうかー」「幼稚園やないやろ、こんなん…」 




畑と砂場と芝生と木陰








栗を使った砂場制作の様子


特注の太い栗材を使って砂場を制作中。排水完備。美しい栗の木肌がなんとも気持ちいい。






南側にある0~1歳児の庭。
保育室前の広いテラスから庭は、段差なく全部地続きにしました。
市街地ですがフェンスの向こうには田んぼが広がっています。



棚にはブドウ



細目の砂を使った柔らかい砂場の下は暗渠排水。
あっという間に砂を広範囲にばら撒いてしまう子ども達の遊び方を見て、当初のいわゆるバンカーから形状と位置を変更し、名栗(なぐり)丸太の古材を加工して囲いました。








3ヶ月後の0歳専用庭



みかんやイチジクが実り、芭蕉が茂り、屋久島カンナが咲き、フェンスにはノウゼンカズラやムベ、特注の名栗と檜で組み上げた棚はブドウ(ナイアガラ、ベリーA)に覆われていきます。
そうなるともう、ここは「園庭ではなくて天井のない保育室」(松方園長)







ちいさな植込みですが大きな変化と発見が待ってます


大運動会を想定し広く取ったグラウンド、その手前に許された、小さな植込みの山。
小さくてもここには、四季の変化に富んだ花木や山野草が30種類以上、約200あります。
発見の喜びとともに、この中にしゃがみこむ、ひとりひとりの気持ちをそっと受け止められるような場所になって行ければと願いを込めて。







美しく面取された洗い場


 役物タイルで丁寧に面取され、すっきりとして使いやすい洗い場です。過去にはカタログを頼りに派手な造形に走り、子どもたちにとって非常に使いづらいモノを造らせた設計士もいました。数年後 園により解体されましたが、プロなら面倒でも子どもの動きを観察して意匠は自分で考えましょう。







水尾保育園 暗渠排水工事中



 広いグラウンドは、現場で提案した工法も採用していただき、全面的に暗渠排水工事が行われました。
開園してからでは困難な工事です。最初にステージを使いやすく、そのベースを見えない所までしっかりと作ることで、年々変化していく保育の状況に合わせて、スムーズに対応できます。








長いフェンスはすべて緑へ変化する


↓ 3ヶ月後


竣工3ヶ月後



「フェンス緑化」
植えたツル植物は、マタタビ、サルナシ、原種テッセン、トケイソウ、アケビ、ムベ、ツルアジサイ、スイカズラ、ハニーサックルetc・・・ 一律に1mにつき5株をという役場の超密植基準はありえない。1m1株にしましたがまだ多すぎ。グランドカバーにはシロツメグサを蒔きました。



そして果樹の成木を植栽。たくさんの実をつけ始めた3mの暖地サクランボやスモモ(太陽)、びっくりグミ、ヤマモモ(森口)、大実ザクロ、12本の大きなブルーベリー。リクエストのフェイジョアと広島の被爆アオギリの子孫も。
日当たりもいいし、土もいい。さてこれからどうなるかな、私もわくわくしています。





     ⚪︎               ⚪︎





保育園は園庭の予算が組めないことが多い中
子どもたちのためにいい仕事がしたいという、京都の(有)地域にねざす設計舎 TAPROOT や、藤木工務店京都支店の、子育て中の若い担当者達の意欲的な努力がなければ実現できませんでした。 
特に、現場に学ぼうとするTAPROOT 岡村氏の向上心と行動力は、これまで出会った設計士のイメージをずいぶん良い方に変えてくれました。




さらに、ややこしい材料を準備し、遠くまで応援に来て下さった京都木村農園、
貴重な栗材は原田銘木と伝統工芸士おさむ工房、
そして頼りになる判断力と機動力を持った仲西造園に助けられて、非常に短い工期のハードスケジュールでしたが、なんとかたどり着きました。
支援してくださった皆様、協力してくれた職員や理事の皆さんに心から感謝したいと思います。ありがとうございました。

以上とりあえず、ご報告まで。







子どもと植栽 : こころってなぁに2016年09月25日







みつばち保育園西山園舎の桑1





あなたには、愛する木がありますか?

木はほかの生きものたちの思いを、そこから動くことなくじっと受け止め
決して、ほかと比べたり、競争させたり、教育したり、責めたりしません。
大ぜいの雑音から、ひとり隠れる場所もそっと提供したりして
木には、地球上の自然の一部である人間の、「こころ」を育てるという大切な役割もあります。(※注) 

都会ではこのところの保育園開設ラッシュ?で
お役所も設計者もゼネコンも忙しそうですが、植栽等の外構については、建物のオマケ程度にあしらわれているのが現状です。庭なのにまるで路側帯の緑化状態。よくても住宅展示場の植栽以下。








カタクリの花を見る











高島にて。






こんなふうに恒常的に園外に出てゆける環境にいる年長組はまだしも
0歳からの年少組は当然、園内で生活のほとんどをすごします。
「三つ子のたましい百まで」という、たいせつな時期を。

一方、誰かさんのお陰もあってこの国では、弱者切り捨て、経済効率(お金)最優先がまるで暗黙の了解のようになってきました。幸せとは何かと考えず、損得や目先の利害に敏感に振り回される風潮。
相模原事件の衝撃は、そんな経済至上のしくみの中で、「こころ」を欠落させたような不自然な人間たちの社会がどういう帰結を迎えるか、というところまで想像させるに十分でした。



「何してんの?」
「木を植えてるの」
「なんで〜?」

ここでは特に、子どもたちの育ちと庭(や自然)の関係についてもう少し具体的に考えてみようという保育士や保護者、そして建築士や造園のご参考に、自分がかかわってきた中から、8件の植栽や作庭に絞って(不十分は覚悟の上ですが)紹介しておきたいと思います。豪華な遊具や凝った造園などはひとつもありませんし、保育の方法や内実、地域性にも大きく関連することとは思いますが、どれかひとつでもヒントになれば幸いです。
なぜ植えるのか? どう植えるのか?



なお写真の多くは、みつばち保育園(京都市西京区)丸国朋子園長のご協力をいただきました。
みつばち保育園をつくる会の園長ブログも、是非ご覧になってください。大人も含めて、人(の心)を自然に育てるために、保育園はここまでできるんだという地道で貴重な記録があります。







      *       *       *





(※注)

   脳内に「こころ」は存在しない


  受精から乳幼児期までの「こころ」の形成のメカニズムについては、近年各国でさまざまな分野に於いて、少しずつ研究がなされてきています。
 医学的、解剖学的にも脳にはないとされる「こころ」の在処(ありか)やその形成が、世界的に注目されるようになった大きなきっかけは、故三木成夫氏(みきしげお 解剖学者、東京藝大教授、1987年61歳で逝去)の研究だと云われています。埼玉県さくらさくらんぼ保育園での講演『内臓のはたらきと子どものこころ』(1982年築地書館) (現在は、河出文庫『内臓とこころ』としても出版されております) は、聴衆の大きな感動を呼び、現在未来に向かって、社会的にも重要な問題提起でした。夭逝(ようせい)が惜しまれます。
 地球と同じく、奇跡のようなヒトの体の不思議さとともに、暑い、寒いといった四季や、土や水、草木など自然(=宇宙)の感触から隔離された便利快適な箱の暮らしや、「脳の発達」のみを偏重し、目的化したような保育が、乳幼児期の「こころ」の形成(あるいは共生というDNAの意思)を阻害していることにも気付かされました。







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1. 銀杏(イチョウ)   みつばち保育園・本園の主木






銀杏の収穫


ギンナンとり







みつばち保育園の銀杏2


比較的踏圧にも強い、大実銀杏の雌株成木を植栽。珍しい開張型の樹形で登りやすい。
銀杏は御堂筋ではおなじみですが、98年に絶滅危惧種に指定されています。針葉樹に近く、恐竜の時代や氷河期を生き延びてきた、生きている化石ともいわれています。








酷暑で弱った銀杏に水をやる1歳児


今夏の酷暑で弱ってきた銀杏に、水を運ぶ1歳児たち。








ひとりになって集中したいときの場所


みんなと離れてひとりで集中したい時も、銀杏の影に。
園長によると、この幹に抱きついて、ひとりじっとしている子どももいるそうだ。









0歳児室側から見た園庭の配置


(レイアウトについて)
0歳児室側から見ると、手前に専用の極細粒砂を入れた3m四方の砂場(園庭レベルで枕木埋め込みのため、大地に柔らかく同化し、公園のコンクリート砂場のような違和感はありません)、
その向こうに土の山、さらにその向こうに銀杏等の植栽群のある山、という配置。
狭い園庭ならではの思い切った工夫だが、0-1歳にとってはちょうどいい広さと眺め。









右側が0歳児室


右側が0歳児室。専用の砂場は園庭に溶け込んでいます。園庭にいるのは1歳児。









0歳児の意欲


0歳児の砂場からは手前に土の山、その向こうに木の山と、いつも順番に大きい子どもたちの遊びが見えます。0歳児の意欲も違ってくるかも。









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2. 桑の木 (みつばち保育園・西山園舎の主木)





みつばち保育園西山園舎の桑3









みつばち保育園西山園舎の桑5


おいしい桑の実(ドドメ、マルベリー)。桑の葉は養蚕で知られていますが、立派な果樹。古来、桑の木には霊力があるといわれており、世界中に逸話が残されています。中国では聖なる木とされています。








みつばち保育園西山園舎の桑6


子どもたちはとても慎重に手足の場所とバランスを考えながら登っています。降りるときはさらに慎重になります。
自分がどこらあたりまで安全に登り、且つ降りてこれるかは、本人がいちばん分かっていますが、保育士はそれぞれの子の力やその日の状態を把握した上で信用して見守っています。
私も実際に登りながら、子どもたちが登りやすく、また、保育士たちがその様子を把握できるように、という手入れを毎年繰り返しています。








みつばち保育園西山園舎の桑2










みつばち保育園西山園舎の桑4


幹に抱きつくカイカンは、地球に抱かれる安心感。

















ところが、この年


養生作業を終えると、心配そうに見ていた子どもたちが一斉に登り始めた、


台風18号の直撃で二股の根もとから裂けて倒れてしまいました。保育園の理事長からは、すみやかに撤去するよう依頼されましたが、一晩考えて、傾いた方は起こし、芝生山の上に完全に倒れてしまった半分は、そのままの状態で養生して子どもたちと共に生きていくことにしました。
伐られるのではと心配そうに見ていた子どもたち。『もう大丈夫、登ってもいいよ』と告げると一斉に登ったり幹にさわったり。









年少も登れる桑の木に











2歳児も桑の木登り


2歳児。年長の木登りにあこがれていた年少たちも、これなら遊べます。
木に付いた虫みたい?









起こした方は桧丸太で支柱


起こした方は、根を養生し、6m長 3本の桧支柱をした上で登ってみましたが、以前よりも数段むつかしくなりました。工事中もそばを離れず、何度も『切らんといて』と懇願していた彼は、許可を得るとうれしそうに真っ先に登っていきました。








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3. 藤棚とキウイ棚 (みつばち保育園・西山園舎)





みつばち保育園西山園舎の藤棚2


藤の花が笛になることを発見。








みつばち保育園西山園舎の藤棚1


藤の美しさと香りは、また格別。白と紫と赤紫の3色を混ぜました。
季節感には、自然の美しい色彩や触感、造形と共に、エグい、渋い、くさい、酸っぱい、辛い、甘いといった豊富な味覚や匂いも重要な要素です。虫や動物たちはよく知っていますが。







 

キウイ棚


登れるキウイ棚









みつばち保育園西山園の藤棚2
 









みつばち保育園西山園の藤棚3


棚は遊具としても活用されます。西山園舎には3箇所あります。











年輪がとても細かく重たい右京区京北 黒田地区産の芯持ちヒノキのみで組みました。ドイツ・オスモカラーウッドステインプロテクター使用。10年経ちました。再塗装1回、イタミやささくれは全くありません。








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4. グミの木と柿 (みつばち保育園・西山園舎)





採りたくなる、緑と赤のコントラスト


かわいいコントラスト。グミの色はなぜだかうれしくなります。









初夏のグミとり


グミ採りは初夏。








グミの赤










みつばち保育園西山園舎のグミ1


虫だってグミを放さない










柿とり


秋は柿









グミの木から柿を取る


柿はたいへん折れやすい。彼は隣の頑丈なグミの木に登り、柿の枝を引き寄せて採った。










グミの木から柿を取る2








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5. 芝生の山  (0歳児専用)





みつばち保育園の芝山


大地の起伏は大切ですが、広すぎると不安になります。植栽などで安心感のある地形や配置を。後ろの大木は大実ザクロ。(みつばち保育園)









みつばち菜の花保育園の芝山


0歳児室から直接ハイハイで出れる芝生山。年長児は入りたいけど入らない。イチジクやバショウ、クヌギやマンサクの他、保育室の西日よけを兼ねて高木も植栽。コブシとホオノキ。
ホオの葉は大きくて殺菌力もあり、万葉の時代から食べ物の包装などに使われてきました。給食室でも活用できます。花は大きく蓮に似ています。樹皮は生薬コウボク。
コブシの花は春の農作業の指標とされてきました。花蕾は生薬辛夷(シンイ)。鼻詰まりの薬。
(みつばち菜の花保育園)








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6. ノウゼンカズラのアーチ2種





北園舎(西洋種)


みつばち保育園・北園舎のアーチ


みつばち北園舎と呼ぶ別邸入口。幹線道路とバス停に面していてガサツな環境のため、あえて異界への入口風に。西洋種ならではの旺盛な「こんもり」感を利用しました。成長は予想よりかなり激しいですが。
建物まで続く石畳の奥にはナツメ、ヤマモモ、サクランボ、ヒメリンゴ、イチゴの木、ユスラウメ、夏ミカン、百目渋柿など、実のなる成木がいっぱい。バスを待ちながらブルーベリーを覗き込む御婦人。








みつばち菜の花保育園(日本種)


みつばち菜の花保育園のアーチ











みつばち菜の花保育園のノウゼンカズラ


こちらのアーチは、ブルーベリーやキンカンが並ぶ長い園路のアクセント。松の流木に絡む日本種のあっさりとした樹形と大きくてエキゾチックな花。花期も長く、今年は9月の今でもまだ咲き続けています。









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7. ただの山 (西山園舎)





園庭のど真ん中に、10t車10台で作った、ただの土の山。 子どもたちの創意工夫で常に変貌します。


「アカハラすべりー」と名付けられた腹式高速スライダー


2歳児の大胆な発明、「アカハラすべりー」というらしい超高速自腹式スライダー。園外では決してできない遊びです。










雪が積もれば当然こうなる


雪が積もれば、これが自然。










1歳児もどんどん登る


1歳児もガンガン登ります。このデコボコがまたおもしろいのです。












かまど。











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おふろ好きだね~


ほんと好きやねー









山頂に露天風呂を


年長は山頂を掘って









風呂完成


露天風呂を作ってしまいました。










山の整備を手伝う4歳児


山の整備を手伝う4歳児。










自主トレ


2歳児の自発的な運動会の練習。ラグビー部ではありません。










運動会2016/09/25


西山園舎での今年の運動会(2016/09/25)。クワの木より右奥、藤棚下から園舎内までL字型に広く観客席を取り、土の山とグランドが子どもたちの舞台。
カメラはプロに任せて(それがルール)、素直にじっくり子や孫たちを観ていただき、「到達度」ではなく、自発的な助け合いや強い仲間意識に支えられた努力や集中力が、ひとりひとりの生きる自信となってゆく様子に、親たちも気付くことが多いはず。一見の価値あり。


畑は左の山のさらに向こう側にあります。







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8. 畑   (西山園舎)





道具を安全に使う


腰の入った道具の使い方と、安全な間隔もいい感じ。
この西山園舎の畑の土は、真砂土にJA京都中央製の堆肥(京の植木屋が剪定した枝葉とサントリーのビール残渣が原料)を3トンと諏訪の黒曜石パーライト等を大量に混ぜ込んで作りました。土にもいのち、原料や熟成度の不明確な格安「バーク堆肥」などは使えません。









西山園舎の畑作り


力の入れ方と3人のバランスがすばらしい。まったくいい仕事をします。












しかし、沓掛から南へ西山を縦断する京都縦貫道の延伸工事後、鹿やイノシシに加えて、昼間でも毎日のようにサルの群れがやって来て、子どもたちの畑やサクランボやスモモといった果樹を食べ尽くすようになりました。
人間の「経済活動」によってテリトリーを分断されたり、棲みかを追われた子連れサルたちの必死の行動には、もう畑を守るすべを知りません。










タマネギの収穫


できればそういった心配のない都会地での畑を確保したい。こんな具合に(2歳児)。










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≪附記≫

  植栽樹木の準備について  

一般的に建築設計者は、植栽については依頼者の希望を聞きながら参考書を片手に樹種や大きさを数字で決定します。公共事業等のいわゆる規格物や苗木なら生産量も多く、ほとんど入手できますが、現場が要求する特殊性によっては、樹種とサイズを注文すれば入荷できるとは限りません。

保育園の場合、重要なのは、その現場(特殊性と目的)に見合った樹種の選定とその個々の樹形、そして芝生山や棚などの大地の、使えるレイアウトと配置です。つまり、そこでどういう保育をしたいのかということに尽きます。保育士たちや保護者のわくわくするような思いを形にしていくのです。

たとえば、みつばち本園の主木「1.銀杏」は、子どもたちが登れること、葉張りが6m以上で樹形や木陰がやさしいこと、季節感に富み、実が食用にできること、虫がつきにくいこと、踏圧に強いこと、高額でないこと等が条件でしたが、探し回って、出会いの木を特定してからも1年以上の準備が必要でした。
いわゆる「根回し」という作業です(伸び放題の根を一旦切り詰めて新根を出させ、移植が可能なコンパクトな根をつくること)。根だけでなく葉張りなども、なんとか運搬可能な状態に持ってゆく必要があります。さらに、樹種によって安全な移植適期があります。

しかし多くの場合、新設の植栽は人間(経済)の都合で厳密に限られた工期にあわせて、このナイーブな生きものを無理から移す作業です。
大切な出会いの木を枯らしてしまったら、もう代わりはありません。充分な配慮が必要です。

建物の竣工はそれで完成=工事終わりですが、生きものである庭にとってそれは、人間と共に成長し変わってゆく長い付き合いの始まりにすぎません。生きものならば年々良くなってゆくのが自然の理、そのための維持管理方法や園内の体制(ふだんの水やりや芝刈は誰がするのか等)についても、ひととおり考えておく必要があります。もちろん、お膳立てするのではなく生活の一場面として、子どもたちと共にできることも多いはず、保育士だけで無理して維持しようとせず、自然やほかの生きものから一緒に学んでゆくつもりで、考えていきましょう。








高さ、葉張りとも3m50を超える、おいしいハッサク






今春、園舎を建て替え中の保育園から打診があった時点ですぐに、高さ、葉張り3.5m以上のハッサクを特定しました。ハッサクにとっては移植困難期である1月の植栽が想定されるため即、根回し、高さ2mにまで強剪定し、特大の鉢上げをしていただきました。(↓鉢上げ後)
希少な木の場合、話がまとまるまで待っていたら、根回し後の新根の成長が間に合わないので、リスクがあってもこういう対応をします。








真冬の植栽を見越して、根回し、鉢上げ。樹高も2mに。


京都木村農園や仲西造園の丁寧な仕事と管理で、鉢上げ後も元気でいてくれています。手前のポットはブルーベリー1m。











自然と不自然 : 黒兎の独白2016年04月03日




 黒うさぎぺっぺの とりとめのないモノローグです。


この表情!2016/07/23伏見稲荷にて撮影
      
       (伏見稲荷へ奉納された行燈画より)
       




私も生きるために細々と職人を続けているわけですが
(職人を続けるために生きているように見えたりもしますが)
この仕事そのものにストレスを感じたことはありません。貧乏 (正確には人間が生み出した『お金』の存在そのもの)を除いては。
ただ、ときには無理解な事態、不自然な対応に直面して、非常にがっかりすることはあります。

不自然さのストレス。

それが私たち人間に与えるダメージに、少しでも抗したい
より自由で自然な心を取り戻したい、という渇望みたいなものが
この仕事を続けるほんとうの動機なのかもしれません。

植物には、ふつう根っこがあります。
根っこが踏みつけられて土が固く締まり、息ができなくなれば、死んでしまいます。
こう言うと幼児は必ず『なんでー?』と聞きますね。
この頃は、いい大人でも『なんで?』と言う人がいたりしますが、なんで?

酸素を運ぶ植物の根系図とヒトの血管図は、よく似ています。
元をたどれば、同じ海から生まれたRNAだったりDNAなわけで
人間の根っこは、運動神経系を統括する部品の脳ではなくて、
赤い血の流れるこころ、にあると思います。
それは自然な環境での共生を刻み込んだ、あらゆる生物のDNAの意思でもあるはず。

トランプさんの言う「環境よりも経済」を平たく言うと
ひとの命より自分のお金、ということになりますが
それはまるで、種の絶滅へといざなう、ハーメルンの笛のように感じます。





   …………………










これがポストなの?ポストって書いてないじゃない。回覧板は入るけど両手使わないといけないし、ちょっと高いわね。




【何のシンボル?】

 自然の素材で作りこんでも、素直な愛を感じない不自然な景色になることもある。職員達と練り上げた園庭に、園長兼理事長の独断で突如出現した140万円也!の巨大で異様な『ポスト』。
外構は人格を反映する。
 この現場では、活発だった職員たちの助け合う雰囲気とは異質の、内実の妙な変化を感じる。開園時より、職員や子どもたちの生き生きとした日常を、食の側から活写して評判だったブログ日々菜々も凍りついたまま。
 違和感の正体は、権威やカリスマ化への欲かそれとも老いによるものか… いずれにしても硬直した組織でヒトは育たない。指導者や『正統な後継者』としての自信や思いがあるのかも知れないが、ずっと正しい歴史を歩んで来た人などいない。ここまでやって来れたのは、色んな人達の善意や試行錯誤、陰日向の協力があったから。正義は誰にでもあり、正解は一つではない。
 謙虚さを忘れた独断の焦りが、素直に心情を吐露してしまったような、このアンバランスな造景は、まるで胸像の様に映り、後に続く者たちの心に響かないばかりか、暴力的にすら感じてしまう。
 このままでは、あなたの積まれて来た徳と、大きな可能性を持つ若い現場が、あまりにもったいない。

            
  




 …………閑話休題…………






最近、環境エンリッチメントとかいう言葉を耳にしました。おもに動物園で使われています。

動物は自然の環境にいないと、本来の正常な行動ができなくなります。
魚やカエルもそうですが、とりわけ、知性が高い霊長類や象などにとっては死活問題となります。
もちろん人間もです。

たとえば、繁殖にも実績をあげている北海道の旭山動物園。
小菅名誉園長の報告(→Link)に「環境エンリッチメントと繁殖行動の発現」と題したレポートがあります。

―――繁殖行動はこころの問題という部分を少し引用しますと―――

動物に十分な広さの施設を用意し、生息地の環境をそのまま切り取ってきたかのような飼育環境を作り出し、さらに食べ物も現地のものを用意したとしても、繁殖行動を起こさない動物がいることも事実なのです。
では、何が不足なのでしょうか。それは心の問題なのだと思います。これまで我々は
「動物は健康であれば繁殖するはずだ。だから繁殖しないのはどこか体の具合が悪いのではないか」
と考え、健康診断を繰り返す傾向にありました。
考えてみれば、同じ方法で飼育していても、繁殖する個体と、繁殖しない個体がいるということは、やはり繁殖行動には、精神的な要素が大きく関わっているということだと思います。
旭山動物園では、動物たちに“しあわせ”を感じて生活して貰おうとさまざまな環境エンリッチメントを実施してきています。例えば、サイやゾウには泥浴び場と体をこすりつける太い木を用意し、キリンには高いところに餌を釣ってあります。水鳥には、3000㎡の広さに高さ14mのネットを張り、自由に飛べるようにしました。さる山のニホンザルは、草を指で摘んで食べ、チップの中のピーナッツを探して時を忘れ、オランウータンは、高さ17mの空中散歩を楽しんでいます。 多くの来園者が「動物たちが楽しそう」と感想を述べています。私も同感です。 (以下略)




旭山動物園のオランウータン





長くなりました。要するに動物たちは
餌を探してとるという苦労がなくなると食欲もなくなる、
群れの社会で生きるものたちは、群れでなくなると、まともな出産や育児ができない、
ライバルがいないと発情しない、といったことから
そのおかれた環境が不自然だと、
つまり、「生きているしあわせ」を感じないと、異常な行動をするということです。

ヒトも群れで生きる、自然界ではひ弱な生物。
「生きているしあわせ」に、ほんとうに必要なものとは何でしょう。
お金?能力?学歴?教育?道徳?権力?
どれも他者を差別化し利用する為に、大きな脳で編み出して来た、不自然な道具や価値観に思えてきます。

報道は日々、理解しにくい犯罪やアメリカを中心とするテロの応酬、政治家のおごりや広がる貧困を伝えています。
その犠牲者には必ず子どもたちがいます。
そして私たちには、こころの病みもじわじわと広がっています…

残り時間も少なくなってきましたので、次の世代に思いをめぐらせながら、取りあえず仕事に戻るとしましょう。
にんげんエンリッチメント。
なにしろ宇宙から見るこの小さな美しい星はひとつで、どこにも国境なんて引かれてないそうですから。







  ★     N E W S     ★    





ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領
                                           出典 shanti-phula.net


『私は日本人に問いたい。日本国民はしあわせなのか?』とのメッセージを持って
ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領がはじめて来日しています。

『私たちは、発展するために生まれてきているわけではありません。
幸せになるためにこの地球にやってきたのです。
人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。
命よりも高価なものは存在しません。』

フジテレビが緊急特番を組むようですので、注目しています。

≪緊急特番:フジテレビ系4月8日(金)午後7時~午後8時54分 池上彰氏と対談≫
≪関西テレビは4月9日(土)午後3時30分~午後5時30分≫