萌色:舞鶴2018年04月11日



異常な春に、全てが一斉に芽吹いた。


 春の芽吹き色には未来や希望、再生といった、いのちの普遍性を感じます。
それは私達が「自然」と呼ぶ宇宙の真実なのでしょうが、今年に限って、どの木も皆一斉に喋りだしたので、まあ賑やか







藪椿の自然さ
















物言う椿の存在感。


椿の存在感。成長はゆっくりで寿命も長く、長(た)けたものには神が宿ると云われてきました。







ユキツバキ愛の泉


ユキツバキ(雪椿)は下枝が長い独特の樹形。冬、その細長くしなやかな枝を、深い雪の中に潜らせ凍てつく寒さから我が身を守って越冬し、雪が溶けるとその枝を持ち上げてたくさんの花を咲かせます。

暖地生まれの椿が、日本海側の厳しい気候を生き抜くために特化したとも言われていますが、椿と雪椿はまったく別種だという学者もいます。

これはその園芸品種で銘は「愛の泉」。開き始めは作り物のように繊細で美しい「乙女椿」もルーツは雪椿です。それにしても誰がこんな微妙な名前をつけるのかしら…







ニホンシャクナゲ


シャクナゲ(石楠花)も同様に、雪の中で押しつぶされるようにして越冬します。
今年は桜、椿、ミズキ、ミツバツツジなどと一緒に、あわてて咲いてしまいました。
急に暖かくなったとはいえ、やっぱ変ですね。
いったいどんな夏が待っているのでしょう。






舞鶴湾


 ( 於 舞鶴自然文化園 )








のびろのびろだいすきな木:小浜白石2018年04月16日

    


            みんなみんながすき
            ひとりひとりがいきをしているから
            おうきなおうきな木
            そらにむかっていきをしているよ






谷へ。遠くに山桜が点々と残っている。



 有史以前から、大陸と繋がりを持ち、この国の文化や成り立ちに重要な役割を果たしてきた若狭。なかでも小浜市は山側に細かく伸びた谷に、古い縁起の社寺が無数にある不思議な地域です。

 そして近年、若狭は「原発銀座」として、何故か原発がない大都市の大量消費を遠距離送電で支えることを、強いられて来ました。
 
 その鯖街道ならぬ原発街道を走って、どうしても会いたかった木を、20年ぶりに訪ねました。
 行先は小浜の白石神社。
 道は広くなり、神社周辺もキレイに整備されていて、場所を間違ったかと思わず通り過ぎるほどでしたが、意中の椿は衰弱が目立つも、大きく腕を広げて森の中に立ってくれていました。





樹齢1000年をはるかに超える椿


樹齢1000年は軽く越えているだろう椿。成長はゆっくりの椿ですが、胸周りを測ってみたら、約235cmもありました。







精一杯広げた枝と美しい花。


頑張って伸ばした広い枝一面、星空のように花をつけています。








かつては広範囲に続いていた椿の森。



The camellia japonica trio とでも呼びたくなるような美しい椿たち。秀吉より前は、奥山まで広範囲に椿の森が続いていたそうです。今、誇らしげにそびえる巨大な椿は、この3本だけ。



森には、鹿に表皮を広範囲に噛じられて、立ち枯れてしまった幹周り50cm程の椿や、150cm程の伐り株もありました。
子どもの椿が見当たらないのは、全て鹿に食べられてしまうからでしょうか。それとも…  ?    







比較的元気な2本の椿


 見事な枝ぶり。一見元気そうですが、左右の椿の葉色の違いに注意 。








千年を経てもこの気品。


1000年以上繰り返し咲き続けている、やさしい花。若干細めの葉も特徴的です。







どこまでも高く伸びた枝に咲く椿。








横に伸ばした枝のやさしさ。


花は少し小振り。深い赤の発色も素晴らしく、気品と誇りに満ちています。








大きく垂れた枝に上品な花











Ageless love


白石神社の拝殿は、この建屋の中にあります。美しい根っこはタブノキ(椨の木)。敷地には椿よりもさらに巨大なタブノキが数本あり、幹回りは測っていませんが、どれも300㎝を超えていると思われます。
(タブノキは海沿いに自生する楠科の常緑高木で、若狭ではよく見かけますが京都市などの内陸部にはありません。アボカドの親戚、アオスジアゲハの好物、人は樹皮を線香の材料にしたり八丈島では樺色の染料にしたりします。)
 







白石神社


建屋の中には、白石大明神。
渡来人(唐人)姿の若狭比古神がここに降臨したという古い言い伝えがあり、大陸と奈良とを結ぶ伝承も豊富です。
表札(扁額)が新しくなってる。








雪の囲いに空けられた無数の穴。


建屋に空けられた、無数の穴。
キツツキにしては大きいし、ムササビかな?モモンガかしら? 
ここに住んでるのかな、
誰が何のために空けたのかわからないけど、奔放でリズミカルな穴に、得意げな顔が浮かぶ…







いっぱい穴をあけたのだあれ?










台に天保拾年と刻まれている。


 阿吽の獅子狛犬はまだ新しく、獅子の台石には天保拾年と刻んであります。
「大塩平八郎の乱」から2年後。江戸幕府が蘭学者を弾圧した「蛮社の獄」の年(1839)。
 苔が乗ってるせいか、ずんぐりとしてかわいい。








狛犬


 だらりと大きく垂れた耳、ピンと立つぶっといシッポ。









衰弱が目立つ右の最古の椿。


 ( 右の注連縄の椿は衰弱、葉色が怪しいのは真ん中の椿。中央足元に覗く超巨大な幹はタブノキ。 )




 神宿る椿森の白石神社。
周辺がすっきりと整備されて森も明るくなり、クルマも止めやすくなったけど、衰弱を見せる太古の椿にとっては、風当りや乾燥、そして地球温暖化による異常気象も気になります。

また椿は、桜のように根の呼吸が活発で、人間の踏圧による地面の固化や除草剤による衰弱、枯死といった事例も少なくないのですが、少しホッとしたのは、20年前も今回も、観光客が一人もいないことでした。








この20年の間にすっかり整備されてしまった。


 誇り高く貴重な母樹の森がかろうじて残っている中、周辺や近年新調された巨大な石碑などに添えて植栽されていた椿たちは、花が大きく花弁も多い派手な園芸品種でした。
 こんな風な、妙に押しの強いデコレーションは、「観光地」では割と見かけますし、石碑や看板に書かれていることも参考にはなります。しかしこのアンバランスな不自然さを割り引いても、椿の衰弱を前に私には違和感が残ります。



1000年の愛を失わないために、今ほんとうに必要なことは

  1. 踏圧対策 (注連縄の椿周辺を立ち入り禁止に
                           して根を守る)
  2. 土壌改良 (椿は特に「アルミナ」アルミニウム
            を含むミネラル分が必要です。良質
                           な有機肥料や腐植等もあわせて広範
                           囲に施肥)
  3. 鹿対策     (景観に配慮した地味なフェンスを
                           遠巻きに、等)

この3つと考えます。

もちろん、急激な地球温暖化を招いている、私たちの便利快適な消費生活を根底的に見直すことや、私たちにとって幸せとは何かと、自らに問い続けることは大前提ですが。

これから先もずっと、椿の森が続きますように。







千年椿の株基


 この椿に会えば、きっと貴方にも深いやさしさが伝わります。