庭のプロって何? : 長岡京 ― 2012年07月14日
※ 庭の修理です。この頃特によく感じることがあり、あえてメモに残すことにします。
Before 後ろ側
Before 後ろ側
丘陵地に造成された住宅街。敷地いっぱいの大きな建物が並ぶ。
お茶人口が減り続ける日本で、狭い場所で工夫しつつ、熱心に稽古をされているお宅の「茶庭」の右半分。
塀に穴を開けて大きなガスメーターが正面に鎮座している。
右のコンクリート擁壁には、高さ0.6mの板石が21枚、モルタルで張り付けられ、さらにその上に高さ1.8mの「建仁寺垣」が乗っていたのだが(下のBefore手前側写真)、か細い六つ割の桟もろとも春の風で吹っ飛んでしまったそうだ。
「工務店下請けを避けて、わざわざ近くの結構大きな造園業者にお願いしたのですが…」
「前の業者にはもう頼みたくない。いったいどこに修理を頼んだらいいのか…」
かつて、通っておられた書道の師範宅で見た私の仕事を、思い出すまで時間がかかった
とおっしゃっていた。
↓ キレイに吹っ飛んだ建仁寺垣の跡。板石の腰張りが残る。
腰張の板石の内側には、75㎜の擁壁水抜き穴が3箇所隠されていた。腰張りされた板石をめくってコンクリの詰め物を取ると、止められていた水が勢いよく噴き出してびっくり!
しばらく止まらなかった
↓
浄土寺石の配置と浮かしたヒノキ60×30で、
水の流れる道を考えながら頑丈な骨組を組む。
↓
割竹、抑えを張り、お隣り側にはヒノキ板を張る。
竹は防カビ剤2度塗り、裏板塀には木材保護塗料。
↓
After 後ろ側
竹は防カビ剤2度塗り、裏板塀には木材保護塗料。
↓
After 後ろ側
ガスメーターは、木材保護剤を塗布した京都産ヒノキで下地を組上げ、無節の京北産杉皮を張って隠しをあつらえた。メンテナンスがあるため、可動式。
建仁寺垣の意匠には、着物で至近を通る(道幅60㎝)ので、引っ掛けないよう縄も少なめに。裏側の隣から見えるところはヒノキ板塀。防カビ対策済。
使う庭である「茶庭」には、とりわけシンプルで品のよさが必要だと思う。
外回りの下地に、湿気に弱いコンパネや杉の白身(しらた)などは普通は使わないものだ。
この程度のあたりまえのことが、此の頃あたりまえでなくなっている。
Before 手前側
7年前のこの庭のようす。まだ比較的新しい。
斜めに設置された狭い枝折戸を左に開けると、蹲踞が完全に隠れて使えない。
細い杉の加工杭に出来合いの竹組が張り付けてあったり、笠しか見えない超ミニチュアの雪見灯篭が不安定に置かれてあったり、ホームセンターで売られているような材料ばかりだし、植栽も真砂土だけで土壌改良剤すら使っておらず、極端な深植えで侘助椿は衰弱していたし、前出の使えない蹲踞など、レイアウトも稚拙だったので、ご主人が奥さまのご趣味の為に、日曜大工でガンバって作ったんだろうと、この時は本当に思ってた。
これがすべて、その地元では一定 名の知られたプロの仕事だったとは。
奥の建仁寺垣が風でコケて、初めて真実を知る。
↓
After 手前側
After 手前側
檜丸太で枝折戸の取り回しを変え、横を向かなくても通れるように。常に蹲踞も使えるように。
小さな出費で済むよう、最小限の修理にとどめたが、庭の空気は地に足をつけたように変わった。
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※ 造園屋に仕事を頼む時は・・・
少なくともその庭職の作った庭を見ておきましょう。
案外それぞれに得手不得手があります。
できればその家の住人に、感想や人となり、メンテの様子などを聞きましょう。
相性がよければ、その職人とは一生の付き合いになるのですから。
庭木の剪定といえども、いわば造園の一環ですから、光や風、土壌や水はけなど現場の個性や樹木の状況を見極め、
その上で、ご家族の思想(おもい)を受け止める知識や技量、度量が問われます。
(どこへ行っても同じような意匠の庭をつくる人も現実にいます。)
生き物としての庭は「だんだん良くなる」のが当たり前で、「いつも同じ」はおかしいのです。
職人というのは、つねに向上心を持って腕と信用で生きているのが普通(と思いたい)。
住む人にとって庭は、心に寄り添うとてもプライベートな空間です。
少しでも信用できないときは、頼むのをやめましょう。
おそらく職人に対しても失礼ですから。
庭はくらしとともに変化し、時間をかけて楽しむもの。そして幸せを感じるもの。
家と違って、竣工時が完成ではありません。
そういった「仕事の質」を買うわけですから、
その場限りの安物買いは、むしろ高くつくことが多いのです。
自称プロに台無しにされた庭をいくつも目にしてきました。レベルの低下を時代のせいにしたくはありませんが、信用の内実が希薄になっているのなら、無責任な仕事には損害賠償を請求されるような緊張感も必要なのかもしれません。
出会いは生き方によるのだろうと思います。
仕事を見て判断していただくため、私も電話帳掲出や広告などはしておりません。
お客様を尊敬し誇りに思える出会いに感謝しています。
少なくともその庭職の作った庭を見ておきましょう。
案外それぞれに得手不得手があります。
できればその家の住人に、感想や人となり、メンテの様子などを聞きましょう。
相性がよければ、その職人とは一生の付き合いになるのですから。
庭木の剪定といえども、いわば造園の一環ですから、光や風、土壌や水はけなど現場の個性や樹木の状況を見極め、
その上で、ご家族の思想(おもい)を受け止める知識や技量、度量が問われます。
(どこへ行っても同じような意匠の庭をつくる人も現実にいます。)
生き物としての庭は「だんだん良くなる」のが当たり前で、「いつも同じ」はおかしいのです。
職人というのは、つねに向上心を持って腕と信用で生きているのが普通(と思いたい)。
住む人にとって庭は、心に寄り添うとてもプライベートな空間です。
少しでも信用できないときは、頼むのをやめましょう。
おそらく職人に対しても失礼ですから。
庭はくらしとともに変化し、時間をかけて楽しむもの。そして幸せを感じるもの。
家と違って、竣工時が完成ではありません。
そういった「仕事の質」を買うわけですから、
その場限りの安物買いは、むしろ高くつくことが多いのです。
自称プロに台無しにされた庭をいくつも目にしてきました。レベルの低下を時代のせいにしたくはありませんが、信用の内実が希薄になっているのなら、無責任な仕事には損害賠償を請求されるような緊張感も必要なのかもしれません。
出会いは生き方によるのだろうと思います。
仕事を見て判断していただくため、私も電話帳掲出や広告などはしておりません。
お客様を尊敬し誇りに思える出会いに感謝しています。
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